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教育におけるテクノロジーの役割についての議論は、少なくとも2500年前に遡ります。教育におけるテクノロジーの役割とその影響について、より良く理解するためには、少しだけ歴史を振り返ってみなければならないでしょう。なぜなら過去の歴史から学ぶべき教訓があるからです。Paul Saettler による The Evolution of American Educational Technology(アメリカにおける教育テクノロジーの発達)(1990) は歴史的観点に立つ最も充実した記録の一つです。しかしこの記録は1989年で止まっています。それ以降、多くのことが起こりました。Teemu Leinonen も最近の出来事について貴重な記述を行なっています。(詳細はLeinonen, 2010を参照のこと) こちらも参照してください。: The Evolution of Learning Technologies.
ここで述べようとしていることは、ごくわずかな範囲での教育テクノロジーの歴史と、これについての個人的な振り返りです。
6.2.1 話し言葉によるコミュニケーション
公式な教育における最古の手段は話し言葉によるものでしょう。つまり人間の声です。長い目でみると、口頭でのコミュニケーションは多くの場面でテクノロジーを促進し、支えてきました。古代においても口伝という方法で、物語や民俗的な事柄、歴史やニュースが伝えられ、正確に暗記させるための重要な役割を果たしました。現代でもなお、多くの先住民文化の中では口伝は重要な役割を担っています。古代ギリシアでは礼拝やスピーチは、人々が学び、学習に合格するための手段でした。ホメロスのイーリアスとオデュッセイアは口承詩であり、公演を目的としていました。これらを学ぶためには、人々は書かれたものを読むのではなく聞いて記憶し、そして文字ではなく朗読によって伝えなければなりませんでした。
しかし紀元前5世紀までには、古代ギリシアでも書かれた文書がかなりの数で存在していました。もしソクラテスの記述を信じるのであれば、以降の教育はますます堕落のらせんを辿っていることになります。プラトンによると、ソクラテスは暗唱ではなく、文字で書いたものを見ながら暗唱するふりをした生徒(パイドロス)を捕まえました。ソクラテスは、神テオスがエジプトの王に「記憶と知恵の両方に使える手段」として、どのように文字を与えたかという話をパイドロスに聞かせました。王は感心しませんでした。むしろ王は、
文字で書くと魂に物忘れを埋め込んでしまう。人々は記憶の訓練を止めてしまうに違いない。書かれたものに頼り切るのが目に見えている。内側にある記憶に頼らなくなってしまい、外側にある記号を手段にしてしまう。お前たちが見つけたものは記憶のための方法ではない。思い出すための方法だ。真実の知恵などない。それは教養の真似事に過ぎない。確かに何も教えないで学生たちに多くのことを伝えることはできる。しかし結局ほとんど身につけずに終わってしまう。知恵ではなく、知恵があるといううぬぼれに満たされた人間など、仲間にとって重荷になるだけだ。
Phaedrus, 274c-275, Manguel, 1996 を原典とする再和訳
私の以前の同僚たちもソーシャル・メディアについては同じように語っています。
石盤は12世紀のインドで、そして黒板とチョークは18世紀に移る頃に使われ始めました。第2次世界大戦が終わった頃、米軍はオーバーヘッド・プロジェクタを訓練の用途で使い始めました。その後、米軍での講義で一般的になり、1990年頃に電子プロジェクタとパワーポイントのようなプレゼンテーション用の機材へと大規模に置き換わるまで使われました。すなわち米軍こそが最もテクノロジーを使った場所であり、主に軍用やビジネス目的で使ったと言えます。つまり当初は教育目的ではなかったのです。
電話は1870年代に遡ります。多くの人が利用し、膨大な費用がかかったことから、遠隔教育を含め一般的なアナログ型の電話は、主要な教育用ツールには決してなり得ることがなかったものの、1970年代以降は音声会議を補うためのメディアとして利用されてきました。専用のケーブルやシステムと、専用の会議室を利用したテレビ会議は1980年代から利用されています。ビデオ映像を圧縮する技術の開発と、比較的安価なビデオ・サーバーが2000年代初頭に開発されたことにより、2008年の講義録画システム、すなわち教室での講義を録画したりストリーミング放送で流したりする仕組みの導入に繋がりました。インターネットを介した Web セミナーは、講義を届けるために広く用いられています。
このようなテクノロジーのうち、教育において、口頭でのコミュニケーションが基盤とならないものは何も登場していません。
6.2.2 書き言葉による通信
教育において、文字、すなわち書き言葉の役割にも長い歴史があります。聖書によるとモーセは、十戒を書き言葉として伝えるために、おそらく紀元前7世紀頃には石盤への彫刻を使ったようです。ソクラテスは書き言葉の利用には強く反対していたとのことでしたが、言葉を書き記すことにより、伝達が解析しやすくなり、長い文での推論がしやすくなり、議論がはるかに伝わりやすく、歪みなく複製できるものになりました。その結果、一瞬で終わってしまう話し言葉のもつ性質が、ますます分析や批評の対象として広がっていきました。15世紀のヨーロッパでの印刷技術の発明は非常に破壊的なものであり、今日のインターネットと同様、多くの人が書き言葉による知識をはるかに容易に利用できるようになりました。書き言葉に対する印刷技術の爆発的な普及は、ますます多くの政府関係者や商業関係者に文字を読んで分析することを要求するようになり、ヨーロッパにおける公式な教育の急速な発展に繋がりました。ヨーロッパでのルネサンスや合理主義的啓蒙運動の発展、迷信や思い込みを推論や科学で打ち壊した背景には様々な要因が関係していましたが、印刷術がこの大きな変化の鍵を握っていたと言えます。
19世紀の輸送インフラの改善、そして1840年代に安価で信頼性の高い郵便システムが生まれたことで、1858年のロンドン大学による外部学位プログラムとしての最初の公式な通信教育が登場しました。ロンドン大学による通信教育は、現在でもロンドン大学国際プログラムとして継続されています。1970年代には高度な教育設計に基づいて特別に開発された、イラストが豊富な印刷媒体による教材を利用した統合的な学習活動を伴う、オープン大学による通信教育が行われています。
1990年代半ばに開発されたWebを基盤とする学習管理システムの発展に伴い、デジタル化された文字によるコミュニケーションはインターネット上での主要な通信手段となり、現在は講義録画システムも利用されています。
6.2.3 放送とビデオ
英国放送協会 (BBC) は1920年代、学校のための教育ラジオ番組を放送を開始しました。 1924年に BBC で放送された最初の成人教育のためのラジオ番組は「人間と昆虫の関係」であり、同年、BBC の新しい教育ディレクターである J.C. Stobart は Radio Times で「放送大学」への構想を打ち出しました。(Robinson, 1982) テレビが最初に教育のために用いられたのは1960年代であり、学校教育と成人教育を対象としていました。現在でも BBC の王権法人団体設立許可における6つの目的のうちの1つは「教育・学習の推進」です。
1969年、英国政府は BBC との協定によって大学レベルの番組を広く届けることを目的とした、オープン大学 (OU) を設立しました。ここでは OU の専門職員が執筆した印刷教材と、BBC のテレビ番組やラジオ番組を組み合わせることで学習コースをまとめました。ラジオ番組では主に口頭での伝達を想定していましたが、テレビ番組では講義形式はあまり取り入れられませんでした。その代わりに一般的なテレビ番組の手法である、ドキュメンタリーやプロセスの実演、事例紹介などに重点を多く置いていました (Bates, 1985を参照のこと)。言い換えれば、BBC はテレビ独特の「アフォーダンス」(この詳細は後で詳細します)に注目していたのです。時が経つにつれて録音用カセットや録画用カセットのような新しいテクノロジーが登場したこともあり、特に OU 番組でのラジオによる生放送は削減されましたが、現在でも世界中で一般的な教育番組が放送されています。(例えばカナダの TVOntario、アメリカの PBS、ヒストリー・チャンネル、ディスカバリー・チャンネルなど。)
テレビの教育への利用は1970年代から実験的に行われてきましたが、とりわけ世界銀行や UNESCO のような国際機関が発展途上国における教育の万能薬として利用するようになってから急速に世界中に広まりました。しかし発展途上国では電力不足、費用面、公共の場で利用可能なテレビの安全性、気候、教員たちからの反発、そして現地の言語や文化における問題が徐々に明らかになってきたことなど、こうした希望に対する実現可能性の低さが明らかになってきたことで急速に衰えていきました。(例えばJamison and Klees, 1973などを参照のこと) 衛星放送は1980年代には利用できるようになっており「世界一流の大学から学問に飢えている全世界の人々に向けて配信する」希望が生まれましたが、同様の理由で急速に廃れていきました。しかし1983年に独自の人工衛星、INSAT を打ち上げたインドでは、現地で作られた教育テレビ番組を国内のいくつかの言語で全国で放送し、インド製のアンテナとテレビ受信機を学校や地域のコミュニティ・センターに配置しました。 (Bates, 1985) インドは本書執筆時点の2015年でも人工衛星を使った遠隔教育を、国内で最も貧しい地域に対して提供しています。
1990年代、デジタル圧縮と高速インターネットが利用可能になったことにより、映像を作成し配布する際のコストが劇的に低下しました。そして映像の記録にかかるコストの低下は講義録画システムの開発にも繋がりました。インターネットがあれば、いつでもどこでも学生は記録された講義を視聴し、復習することができるようになったのです。マサチューセッツ工科大学 (MIT) は2002年、OpenCourseWare プロジェクトを経て、録画講義を無料で一般公開し始めました。YouTube は2005年に始動しましたが、Google によって2006年に買収されています。YouTube は短めの教育素材としてますます利用が増加し、ダウンロードやオンライン・コースとの統合が行われるようになっています。YouTube を使ったカーン・アカデミーは2006年に開始され、方程式やイラストのためにデジタル黒板を採用し、重ね撮りされた音声による講義が提供されています。アップル社は2007年に iTunesU を創設し、大学授業のビデオ教材やその他のデジタル教材が収集され、誰でも無料でダウンロードできるポータルサイトになりました。
講義録画システムが登場するまでは、学習管理システム (LMS) は基本的な教育のデザイン機能を統合するだけのものでした。そのため教員は教室型の授業をLMSに合わせて再設計する必要がありました。一方、講義録画システムでは、標準的な講義中心のモデルから変える必要がなく、いわば PowerPoint や黒板に書くだけのスタイルに支えられた、本来の口頭での伝達に先祖返りしたような印象でした。このような理由から口頭での伝達は今日でも強力に生き残っていますが、新しいテクノロジーに組み込まれながら馴染んできています。
6.2.4 コンピュータ技術
6.2.4.1 コンピュータを基盤とする学習
本質的な話として、プログラム学習の開発では人間が介入することのないコンピュータ化された教育を目的としています。ハードウェアとソフトウェアの設計と、学習内容や評価のための質問を出題するための情報を構造化しておいたものを使い、学習者の知識をテストして迅速にフィードバックが提供されます。B.F.スキナーは1954年、行動主義理論に基づきプログラムされた学習におけるティーチング・マシンの実験を開始しました。(セクション2.3を参照)
スキナーのティーチング・マシンは、コンピュータを基盤とする学習の最初の形態の一つでした。コンピュータによるテストは、人間よりもはるかに容易に評価できるので、結果的に MOOCs では最近になってプログラム学習が息を吹き返してきています。
PLATO はもともとイリノイ大学が開発した一般的なコンピュータによる教育システムで、1970年代後半までには世界中のおよそ12の教育機関のメインフレームコンピュータを繋いだ数千台の端末から構成されるようになりました。PLATO はほぼ40年間に渡って非常に成功したシステムで、掲示板、メッセージ・ボード、オンライン・テスト、eメール、チャット・ルーム、インスタント・メッセージ、リモート画面共有、マルチ・プレーヤー・ゲームといった、オンラインでの主要な機能を組み込んでいました。
人工知能 (AI) を介して教育プロセスを複製しようとする試みは1980年代半ばに始まりました。最初に焦点が当てられたのは算数教育でした。しかし過去30年間に渡る大規模な教育研究への投資にも関わらず、ほとんどの結果は期待はずれに終わりました。コンピュータには学習者が学習する時、あるいは学習に失敗する時に起こる多種多様な現象に対応しきれないということが分かったのです。最近は認知科学や神経科学において詳細な研究が行われていますが、本書執筆時点では、基礎科学と科学的知見に基づいた特定の学習行動の分析や予想との間の溝は、依然として大きいです。
さらに最近では学習者の行動に基づいて反応を分析し、最も適切な分野に行き先を変えるという、適応学習も進化してきています。また、活動状況など学習者に関するデータを収集し、他のデータと結びつけて分析する、ラーニング・アナリティクスも関連する開発領域であると言えます。これらの開発については、セクション6.7 でさらに詳細に説明します。
6.2.4.2 コンピュータ・ネットワーキング
1982年に開発されたアメリカの ARPANET はインターネット・プロトコルを利用した最初のネットワークでした。1970年代後半、ニュージャージー工科大学のマレー・トロフとロクサーヌ・ヒルツは、大学内部のコンピュータ・ネットワークを使い、ブレンド型学習の実験を行いました。彼らは教室での授業とオンライン・ディスカッション・フォーラムを組み合わせました。そしてこれを「コンピュータ媒介コミュニケーション」(CMC) と呼びました (Hiltz and Turoff, 1978を参照)。カナダのゲルフ大学では1980年代に、CoSy と呼ばれるソフトウェア・システムを開発し、販売しました。このソフトはオンライン上のディスカッション・フォーラムをスレッド化できるもので、現在の LMS に含まれる機能の先駆者です。1988年、イギリスのオープン大学は DT200 という科目を提供しました。ここでは OU の伝統的なメディアである印刷教材、テレビ番組、オーディオ・カセットに加えて、CoSy を利用したオンライン・ディスカッションでの議論を加えました。この科目には1,200人の登録学生がいたことから、最も古い「大規模オンライン科目」の一つとなりました。その後、コンピュータを利用した自動化またはプログラム学習と、ネットワークを利用した学生・教員間での相互のコミュニケーションの間で見解の相違が生じていくことになります。
ワールド・ワイド・ウェブが公式に立ち上がったのは1991年でした。ワールド・ワイド・ウェブは基本的にはインターネット上で動くアプリケーションの一つであり、一般の利用者がプログラミング言語に頼ることなく、文書やビデオ、その他のメディアを作ったり、リンクしたりできるものでした。最初の Web ブラウザである Mosaic は1993年に利用できるようになりました。Web以前の時代では、文書を読み込んだり、インターネット上で素材を探したりするためには、長く時間のかかる方法が必要でした。1993年以降、様々なインターネット検索エンジンが開発されてきましたが、1999年に開発された Google は代表的な検索エンジンの一つとして浮上してきました。
6.2.4.3 オンライン学習環境
1995年、Web 上では WebCT(のちのBlackboard)のような学習支援システム (LMS) の開発ができるようになりました。LMS は学習目標を書いたり、学習者が活動したり、宿題について質問したり、ディスカッション・フォーラムになったりする「スペース」を提供するだけでなく、コンテンツを読み込んで整理することができるオンライン教育環境です。最初の完全オンライン・コースとして単位取得できるものは1995年に始まりました。LMS を使ったものもあれば、単に教材を PDF やスライドで読み込むだけのものもありました。教材は主に文書や画像でした。2008年頃に講義録画システムが現れるまで、LMS はオンライン学習が提供される主流な手段でした。
2008年までには、カナダの George Siemens、Stephen Downes、Dave Cormier はWeb技術を利用して、専門家の主催するWebセミナーでのプレゼンテーションやブログ投稿をリンクし、参加者側でもブログ投稿やツイート機能が提供された最初の「統合的な」大規模オープン・オンライン・コース (MOOC) の学習コミュニティを、2,000人以上の登録者を迎えて開始しました。これらのコースは誰に対しても開かれていましたが、正式な評価はありませんでした。2012年にはスタンフォード大学の教授が2人で講義録画を中心とした人工知能に関する MOOC を立ち上げ、10万人以上の学生を集めました。以降、世界中で爆発的に MOOC は広がっています。
6.2.5 ソーシャル・メディア
ソーシャル・メディアはコンピュータ技術からすればサブカテゴリにすぎませんが、その開発は教育テクノロジーの中で独自の歴史的な発展を遂げています。ソーシャル・メディアは異なる幅広いテクノロジーを網羅しており、ブログ、Wiki、YouTube 動画、スマートフォンやタブレットのような携帯端末、Twitter、Skype、Facebook などを含んでいます。Andreas Kaplan, Michael Haenlein (2010) はソーシャル・メディアを以下のように定義しています。
インターネットによるアプリケーションの集合体であり、利用者間で独自に生み出したコンテンツの作成や交換ができる。そして仮想的な共同体やネットワークを使って情報やアイデアの作成・共有・交換ができる。
ソーシャル・メディアは若い世代や21世紀になって生まれた世代と強く結びついています。別の言い方をすれば、本書執筆時点では中等後教育の学生の多くと言えます。ソーシャル・メディアは公式な教育とも統合されつつあり、現在ではその教育的な価値は、例えば教室での学習の周辺にオンラインの学びの場を作ったり、講義の途中でツイートしたり、教員が評価したりするといった、非公式な教育の場面でも使われるようになってきています。このような学習に対する非常に大きな可能性は、第8章・第9章・第10章で詳しく述べていきます。
6.2.6 パラダイム・シフト
教育は長い時間をかけて徐々にテクノロジーを取り入れ、馴染んできていることが分かります。ここで学んでおくべきテクノロジーの、教育への利用における過去の有益な教訓が、いくつかあります。とりわけ、新たに発生したテクノロジーに関する主張は、真実でも、また新しいものでもないという可能性があるということです。また、新しいテクノロジーが古いテクノロジーを完全に置き換えてしまうことは滅多にありません。通常、古いテクノロジーは無線通信など、より専門的で「ニッチ」な領域で生き残ったり、例えばインターネットにおける動画のように、より「豊か」なテクノロジー環境の一部として組み込まれたりすることで生き残ります。
しかし、デジタル世代とそれ以前の全ての世代を区別するテクノロジーの発達は急速に進化しており、私たちの日常生活の中に浸透してきています。ですから、少なくとも教育テクノロジーの立場からは、インターネットの影響については、教育における1つのパラダイム・シフトとして記述しておく方が公平です。私たちは今なお、その影響を吸収しながら応用していく段階にあります。次のセクションでは、異なるメディアとテクノロジーが教育に果たす重要性について、より深く検討していきます。
アクティビティー6.2 歴史は私たちに何を教えてくれますか。
- 何が教育テクノロジーを構成するのでしょうか。MIT で録画された講義をどのようにオープン・エデュケーションの素材と区別するのでしょうか。教育テクノロジーであって、単なるテクノロジーではないというのはどういう時なのでしょうか。
- インターネットの前身である Arpanet は1990年以前にも長らく存在していましたが、インターネット・プロトコルとの組み合わせや、HTML、ワールド・ワイド・ウェブの開発は、遠隔通信や教育にとって明らかな転換点でした。(少なくとも私にはそう感じられました。)それでは一体、何がインターネットや Web をパラダイム・シフトにしているのでしょう。それとも、これらは単にテクノロジーの進化、つまり開発における次へのステップとして普通に通る道なのでしょうか。
- 書くことはテクノロジーでしょうか。講義はテクノロジーでしょうか。これがどうであるかは関係があるでしょうか。
- さらに厳密に、そして批判的に捉える習慣ができるのであれば、上に挙げたテクノロジーの分類や定義にも疑問が湧いてくることでしょう。(人々がコミュニケーションの手段としてどのように対処するかという問題とは全く別です。)例えば、コンピュータが媒介するコミュニケーション (CMC) はインターネット以前から存在していました。(実際には1978年から) しかしそれはインターネット技術なのでしょうか。(確かにその通りです。しかし当時はそうではありませんでした。)ソーシャル・メディアは、CMC とどう違うのでしょうか。例えば放送、ケーブル・テレビ、衛星放送、DVD、あるいはテレビ会議などのテレビ技術と区別することは意味があるのでしょうか。そしてこのことは今でも関係があるのでしょうか。もしそうであるならば、教育的観点とはどのような共通点・相違点があるのでしょうか。
ここに示した問題のうちのいくつかは、続くセクションで明らかにしていきます。
参考文献
Bates, A. (1985) Broadcasting in Education: An Evaluation London: Constables
Hiltz, R. and Turoff, M. (1978) The Network Nation: Human Communication via Computer Reading MA: Addison-Wesley
Jamison, D. and Klees, S. (1973) The Cost of Instructional Radio and Television for Developing Countries Stanford CA: Stanford University Institute for Communication Research
Kaplan, A. and Haenlein, M. (2010), Users of the world, unite! The challenges and opportunities of social media, Business Horizons, Vol. 53, No. 1, pp. 59-68
Leitonen, T. (2010) Designing Learning Tools: Methodological Insights Aalto, Finland: Aalto University School of Art and Design
Manguel, A. (1996) A History of Reading London: Harper Collins
Robinson, J. (1982) Broadcasting Over the Air London: BBC
Saettler, P. (1990) The Evolution of American Educational Technology Englewood CO: Libraries Unlimited
Selwood, D. (2014) What does the Rosetta Stone tell us about the Bible? Did Moses read hieroglyphs? The Telegraph, July 15