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Figure 9.9 Privacy ranking by Privacy International, 2007 Red: Endemic surveillance societies Strong yellow: Systemic failure to uphold safeguards Pale yellow: Some safeguards but weakened protections http://en.wikipedia.org/wiki/Privacy#mediaviewer/File:Privacy_International_2007_privacy_ranking_map.png
図8.9.1 Privacy International, 2007 によるプライバシーランキング
赤: 風土(文化)的に監視社会である
濃い黄色: 保護装置の維持に全体的に失敗している 
薄い黄色: 多少の保護装置はあるが保護力は弱い
http://en.wikipedia.org/wiki/Privacy#mediaviewer/File:Privacy_International_2007_privacy_ranking_map.png

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これもまた、SECTIONS モデルの以前のバージョンからの変更点です。以前はテクノロジーによってコース開発のスピードアップがどれだけ可能になったかという意味で、’S’は「Speed (スピード)」を表していました。しかし、以前スピードの観点から取りあげていた課題はセクション8.3の「使いやすさ」の節でも扱いました。そこで「スピード」を「セキュリティとプライバシー」に置き換えることにしました。これらはデジタル時代の教育にとって、ますます重要な問題となっています。

8.9.1 教育におけるプライバシーとセキュリティの必要性

教員と学生は、オンラインで作業をする際にプライベートな場所が必要になります。教員は報復を心配せずに、政治家や企業を批判できることを望んでいます。学生は、軽率な、あるいは過激なコメントを公開しないようにしたいと思うかもしれません。あるいは Facebook で拡散されないようにしながら、賛否が分かれそうな考えを述べてみようとしたりするでしょう。教育機関は、民間企業による商業目的での個人データの収集や、政府機関によるオンライン学習活動のトラッキング、あるいは不要なマーケティングなど商業的ないし政治的な勉強の妨げになるものから、学生を保護したいと考えるものです。特に、教育機関は可能な限り、オンラインの嫌がらせやいじめから学生を守りたいと考えています。厳格に管理された環境を構築することによって、教育機関はプライバシーとセキュリティをより効果的に管理できるようになります。

学習管理システムは、登録された学生と承認された教員に、パスワードで保護されたアクセスを与えます。学習管理システムはかつて、教育機関自体が管理するサーバーに設置されていました。安全なサーバーに置かれ、パスワードで保護された LMS が、このような保護を提供してきたのです。コミュニケーションは教育機関内で管理されている方が、適切なオンライン行動に関する機関方針を容易に管理できるからです。

8.9.2 クラウド利用型のサービスとプライバシー

しかし近年、クラウドへ移行するオンライン・サービスがますます増えており、それらをホストしている大規模サーバーの物理的な場所は当該機関のITサービス部門すら知らないことも多々あります。教育機関とクラウド・サービス・プロバイダーの間の契約は、セキュリティとバックアップを確実にするためのものです。

にもかかわらず、カナダの教育機関やプライバシー保護委員たちは、データが国外でホストされることには特に慎重でした。そのデータが別の国の法律を通じてアクセスされる可能性もあるためです。米国のクラウド・サーバーで保持されているカナダの学生情報や通信は、米国愛国者法によりアクセス可能になるかもしれないという懸念がありました。例えば、Klassen (2011) は次のように書いています。

ソーシャル・メディア企業はほとんどが米国に本拠地を置いています。そこでは情報の出所に関係なく愛国者法の規定が適用されます。愛国者法により、米国政府は利用者が知らないうちに、同意もなくソーシャル・メディアのコンテンツや個人を特定する情報にアクセスすることができます。
ブリティッシュ・コロンビア州政府は、個人情報のプライバシーとセキュリティの双方を懸念し、ブリティッシュ・コロンビア州の個人情報を保護するための厳格な法律を制定しました。情報の自由とプライバシーの保護に関する法律(FIPPA)は、ブリティッシュ・コロンビア州の個人を特定できる情報は、本人の了解と同意なしに収集することはできないこと、そしてそのような情報が本来の目的以外には利用されないことを義務付けています。

各国が機密情報を共有していることが判明して、学生のプライバシーに関する懸念がさらに高まりました。つまり、カナダに置かれたサーバー上の学生データでさえ、外国と共有されるリスクが残されたままなのです。

しかしおそらく、より心配なのは、教員や学生によるソーシャル・メディアの利用が増えるにつれ、学内でのコミュニケーションが公になり「露出」されることです。Bishop (2011) は、Facebook を利用することによる機関のリスクについて次のように論じています。

  • プライバシーとセキュリティは別物です。セキュリティは主に技術的な問題であり、したがって主に IT の問題になります。プライバシーについては、それとは別の一連のポリシーが必要です。そこには教育機関内のはるかに広い範囲での利害関係者が関与するため、セキュリティとは異なり、さらに複雑な管理方法が存在することになります。
  • 多くの教育機関では、プライバシーに関して単純で分かりやすい一連のポリシーがなく、部署ごとに異なるポリシーがあります。これは必然的に、コンプライアンス上の混乱と困難を招くことになるでしょう。
  • プライバシー保護を目的とした法律や規制は非常に数多くあります。これらは学生だけでなく職員も対象としなります。プライバシー・ポリシーは当該教育機関全体で一貫していると同時に、こうした法律や規制にも準拠している必要があります。
  • Facebook の現在のプライバシー・ポリシー (2011) によれば、Facebook を利用している教育機関の多くは、プライバシーに関わる法律に違反するリスクが高いレベルにあります。単に何らかの免責事項を書いているだけでは、多くの場合、法律違反を避けるのには不十分でしょう。

歯科学生が Facebook 上で仲間の女子学生について暴力的な性差別的発言を行なったことが物議を醸したダルハウジー大学での論争は、ソーシャル・メディア利用に特有のリスクの一例です。

8.9.3 バランスの必要性

教育や学習の領域には密室での作業が不可欠なケースがあります。例えば医学の一部の分野や公安に関連した分野、あるいは慎重に扱うべき政治的、道徳的な問題について議論する場合などです。しかし一般的には、教員がコースを公開し、当該機関のプライバシー・ポリシーに従い、とりわけ学生と教員が常識的、倫理的に行動した場合、プライバシーやセキュリティの問題が起こることは比較的少ないと言えます。とは言え、教育と学習がよりオープンに、一般向けになるにつれ、リスクのレベルはもちろん高まります。

8.9.4 検討すべき問題点

  1. 公開不可で安全に保管する義務があるのはどのような学生情報でしょうか。これに関する所属機関の方針はどうなっていますか。
  2. 特定のテクノロジーを利用することで、所属機関のプライバシーに関するポリシーに違反しやすくなるというリスクはどのようなものでしょうか。あなたの所属機関では、誰に相談すれば良いですか。
  3. もしあるとして、コースに登録している学生しか利用できないよう非公開にしておく必要があるのは、どのような教育・学習分野でしょうか。これを行うためにはどのようなテクノロジーを使うのが最善でしょうか。

参考文献

Bishop, J. (2011)  Facebook Privacy Policy: Will Changes End Facebook for Colleges? The Higher Ed CIO, October 4

Klassen, V. (2011) Privacy and Cloud-­Based  Educational Technology in British Columbia Vancouver BC: BC Campus

See also:

Bates, T. (2011) Cloud-based educational technology and privacy: a Canadian perspective, Online Learning and Distance Education Resources, March 25

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デジタル時代の教育 by Anthony William (Tony) Bates is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License, except where otherwise noted.

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