40

標準的な学術的基準による徹底した分析の結果、学内の教育と比較して MOOCs は学術的厳密さの点で上回り、はるかに効果的な教授法である。

Benton R. Groves(博士課程大学院生)

xMOOCs に感じる大きな懸念は、デジタル世界で必要とされる高度な知的スキルの習得について、現在の設計ではこれ以上進めないのではないかという点である。

Tony Bates

5.4.1 MOOCs に関する研究

本稿執筆時点ではほとんどの MOOCs は誕生から4年未満であり、MOOCs についての研究は端緒についたばかりで、刊行されているものはわずかです。現在の MOOCs 研究の多くは MOOCs を提供している教育機関自身が行なっており、入学や履修登録に関する報告か、教員自身による自己評価の形態をとっています。Coursera や Udacity のような商用プラットフォームを提供する企業は莫大なビッグデータを所有しているのですが、限定的な研究結果しか提供していないのが残念です。また edX が設立される際にパートナーになった MIT とハーバード大学は、主に自分たちの講座に関して研究を行なっています。現時点では xMOOC、cMOOC のどちらについても独立性の高い研究はごくわずかです。

しかし私はこれまで MOOCs の強みと弱みについて考察しているあらゆる研究を可能な限り利用しようとしてきました。そして私たちがはっきりと認識しておくべきは、ここで議論している MOOCs という現象が、政治的、感情的、そして多くの場合、非理性的な観点から評価されており、確かな論拠が蓄積されるまで、しばらく待たねばならないということです。

ここで述べておくべきもう1つの論点として、私が MOOCs の評価に用いる基準は、MOOCs がデジタル時代に必要とされる学びに繋がりうるかどうかである、ということを書き添えておきます。言い換えれば、第1章で定義した知識やスキルの習得に役立つのかどうかということです。

5.4.2 広く開放された無料の教育

MOOCs、中でも xMOOCs は、コンピュータとインターネットがあれば、誰にでも無料で世界最高レベルの大学から提供された高品質の教育コンテンツを利用することができます。このこと自体が素晴らしく価値のある条件です。この意味で MOOCs は教育の提供への有益な広がりだと言えるでしょう。誰がこのことに異論を唱えるでしょうか。もちろん私はそんなことはしませんし、MOOCs についての議論をさらに進めようとは思いません。

しかし MOOCs は唯一の解放された無料の教育形態というわけではありません。インターネット配信ほどの力はありませんし、影響力も限られているかもしれませんが、図書館の書籍、オンラインで広く公開された無料の教科書、そして放送による教育も無料で利用できます。このような費用のかからない教育の初期のあり方から、私たちは今なお MOOCs に当てはめるべきことを学べるのです。

このような教育形態は、公的な単位取得に基づく教育の必要性を置き換えることはありませんでしたが、これらを補強し、強化するために書籍、教科書、教育番組などが利用されてきました。ですから MOOCs も非常に優れた価値のある、教育を継続することができる、そして気楽に教育を受けることができるツールであると言えます。とは言え、以下で見ていくように、MOOCs は人々が十分に教育を受けている場合にこそ最大の効果を発揮します。

問題となるのは、MOOCs が利用者に開放された無料の教育手法であるため、特に発展途上国では従来の高等教育のコストを必然的に押し下げることや、需要そのものを消し去ってしまうというような議論が行われる時です。(5.2節の Friedman のコメントを参照してください)

これまで発展途上国では地上放送や衛星放送を通じた様々な教育提供の試みが行われてきました。(Bates, 1985)しかしこれらは全て、様々な理由でアクセス機会の増大やコストの削減に失敗してきました。中でも非常に重要なこととして以下のような問題点がありました。

  • 地上設備のコストが高額であること。(盗難や損傷への備えを含む)
  • 高度な教育を受けていない学習者に対する地域での援助の必要性と、それぞれの地域にかかる「基盤となる」コストが高額であること。
  • 教育が提供される国々の文化に適合する必要性。
  • 特に評価、学位付与、その地域での認定に関わる管理や運営のための運用コストを負担すること自体の困難さ。

また、発展途上国に一番必要なのはスタンフォード大学の教授による高品質の授業ではなく、高校レベルの授業なのです。そしてアフリカでも携帯電話は広く普及していますが、通信帯域幅は非常に狭いのです。例えば YouTube の典型的な動画をダウンロードするのに2米ドルかかりますが、これは多くのアフリカ人の1日あたりの所得に相当します。ですからストリーミング動画による講義が有効かと尋ねられたら、非常に限定的だとしか言いようがないでしょう。

MOOCs は発展途上国では無益であると言っているわけではありません。むしろ、このことが意味するのは以下の点です。

  • MOOCs が世間の期待に応えることができるのは何であるかという点について現実的になること。
  • 発展途上国の教育機関やシステム、その他のパートナーと協力し合うこと。
  • たとえお金がかかったとしても、地域で必要とされている援助をきちんと確保すること。
  • MOOCs の設計・コンテンツ・配信方法を、対象となる国々の文化的・経済的要件に順応させること。

ところで、オープン教育リソースという意味では MOOCs が常に開放されているというわけではありません。例えば Coursera や Udacity では許諾なしでの教材の再利用に制限がありました。edX のような開放されたプラットフォームでは、教員個人や教育機関ごとに教材の再利用を制限できます。ただし、多くの MOOCs は1〜2年間だけ存在して消えていきます。そのため MOOCs 上の教材を別のコースや別の専攻プログラム上で再利用することが難しくなっています。

最後に、MOOCs の大部分には無料で参加できますが、MOOCs の提供側には相当のコストがかかります。この点は 5.4.8 でさらに掘り下げて論じます。

5.4.3 MOOCs の主な利用者

Ho et al. (2014) の報告によると、ハーバード大学と MIT の研究者らは edX を通じて提供された17の MOOCs 講座のうち、全受講者の66%、修了証を得た受講者の74%が学士号以上を有しており、71%は男性、平均年齢は26歳でした。また、この報告と他の研究によると、受講者のかなりの割合(40〜60%)はアメリカ国外から参加しており、高品質な大学教育へのオープン・アクセスに強い関心が寄せられていることが示唆されました。

コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジの研究者らである Hollands and Tirthali (2014) の報告は「MOOC の中では活発」な62の教育機関における80人以上のインタビューに基づいており、次のように述べています。

MOOC プラットフォームから得られたデータが示しているのは、MOOCs は世界中の何百万人もの人々に教育機会を提供しているということである。しかし MOOC に参加する人々の大部分は、既に十分な教育を受けていたり、被雇用状態にあり、講座に集中して取り組める人々はごくわずかである。全体としてデータが指し示しているのは、現在の MOOCs は教育を「平民的なものにしている」とは言い難く、教育へのアクセスという点での格差は解消しているというよりも、むしろ現状では拡大している可能性がある。

MOOCs への要求を満たす人々とは、大学が行う継続的な教育の多くと共通しているように、高い教育を受け、ある程度の年齢の、雇用された層なのです。

5.4.4 持続と関与

edX の研究者ら (Ho et al., 2014) は edX が提供する17の MOOCs 講座には以下のような様々なレベルでの関与があったことを報告しています。

  • 登録のみ:講座に一度もアクセスしなかった登録者(35%)
  • 閲覧のみ:講座にアクセスはしたものの修了せず、利用できる内容の半分以下を閲覧しただけの登録者(56%)
  • 学習のみ:利用できる内容のうち半分以上にアクセスしたものの、修了証には届かなかった登録者(4%)
  • 修了:講座の修了証を手に入れた登録者(5%)

Hill (2013) は Coursera の参加者を次の5つのタイプに分類しています。

Print

図5.4.4.1 Coursera講座参加者の受講パターン(© Phil Hill, 2013)
図5.4.4.1 Coursera のような MOOCs が提供する講座に出現する学習者のパターン(© Phil Hill, 2013)

Print

Engle (2014) は Cousera 上で開講したブリティッシュコロンビア大学の MOOCs 講座にも次のような類似のパターンを見つけました。他の研究でも同種の報告が行われています。

  • 登録した人のうち、3分の1から半数は何の活動も行なっていない。
  • 少なくとも1つの活動に参加した人のうち、5〜10%の人は修了証の取得に成功している。

通常、修了証を取得できる人は登録者の5〜10%程度であり、MOOC に少なくとも一度は積極的に関わった人の10〜20%程度なのです。しかし修了証を取得した人数は絶対的に大きいのです。edX では17の講座で43,000人以上、ブリティッシュコロンビア大学では4つの講座で8,000人以上、1つの講座では2,000〜2,500人になります。

Milligan et al. (2013) は 2,300人の登録者のうち cMOOC 講座の半分程度を終えた29人を抽出し、インタビューを行なった結果、cMOOCs にも次のような類似の関与パターンが存在することを報告しています。

  • 受動的な参加者:Milligan の研究では MOOC での学習に自信を失って、ごくまれにしかログインしなくなる人々。
  • 見ているだけの参加者:積極的に講座には参加するものの、課題には参加しなかった人々。(インタビューを受けた人たちの約半数)
  • 積極的な参加者:講座での課題に積極的に参加した人々。(同様にインタビューを受けた人たちの約半数)

MOOCs はそれがどういったものであるかを基準に審査される必要があります。例えば、他には存在せず、有益な、公的ではない教育の形態として。このような結果は公的な教育ではない放送教育(例えばヒストリー・チャンネル)についての研究にとてもよく似ています。視聴者にヒストリー・チャンネルで放送されている全てのエピソードを見せ、最後に試験を受けさせるようなことを期待する人は誰もいないでしょう。Ho et al. (p.13) は xMOOCs への関与レベルの違いを次の図で説明しています。

Print

 

Ho et al., 2014
図5.4.4.2 MOOC 参加者の関与レベル(© Ho et al., 2014)

Print

ここで、1985年に私がイギリスの放送教育について書いた一節を引用します (Bates, 1985)。

(p.99) タマネギの中心に核をなす、わずかな学習者が講座全体を真剣に学習し、受験できる場所で最終評価や試験を受ける。その小さな核の周囲には、いくぶん大きな層をなす学習者がいて、試験は受けないものの地元で開講される授業や通信教育には登録する。さらに、より大きな学生の層が存在し、放送を視聴するだけでなく付属の教科書を買いもするが、授業には参加しない。そして、最も大きな集団は単に放送を視聴しているだけである。最後のこの集団の中にさえ、様々な人が存在するだろう。ほぼ定期的に番組を視聴する人から、(またもやこの人数の方がはるかに多いのだが)番組を1回だけ視聴する人まで。

さらに私はこうも書きました (p. 100)。

疑い深い人はこう言うかもしれない。効率的に学ぶことができたと言われている人というのは、講座に勤勉に取り組み、最終試験で優等な成績を修めることができたごくわずかな人たちにすぎないだろうと。(中略)これに対する反論として考えられるのは、もし放送教育がなければそのトピックに関心を寄せることすらなかった人々に興味をもたせることができた時点で放送教育は成功だったと。つまり重要なのは教材に触れた人々の数なのだ、と。(中略)しかしここで問うべきは放送教育が、本当にそれがなければ興味を持たなかった人たちに教育を施したのかどうか、あるいは既に十分な教育を受けた人たちに別の機会を提供しただけにすぎないのではないか、ということだ。(中略)公的ではない放送教育の恩恵を最大限に受けているのは、より良い教育を受けているイギリスやヨーロッパの人々であるということを示す非常に多くの証拠が存在しているのである。

全く同じことが MOOCs についても言えるのではないでしょうか。知識基盤型産業で働く人々にとって欠かせないのは、新しい知識に簡単かつオープンにアクセスできることであるというデジタル時代にあって、MOOCs はそれらの知識にアクセスするための貴重な手段になるでしょう。しかしここで論じるべきは、より効率的に同じことができる方法があるかどうかということです。ですから、公的ではないものの継続性が求められる教育にとって、MOOCs は有益な貢献であると考えられますが、真に革新的であるとは言いがたいのです。

5.4.5 学生は MOOCs で何を学ぶのか

これは容易には答えられない質問です。というのも、2014年現在、この疑問に答えようとしている研究があまりにも少ないのです。その理由の1つは次のセクションで見るように、MOOCs での学びの評価は大きな課題として残っているからです。また、少なくとも2種類の研究が存在します。学びの量を測定する量的研究と、MOOCs 内での学習者の実体験を記述することで間接的にどのような学びを得たのかを探る質的研究です。

本稿執筆時点で MOOCs による学習に関する量的研究で最も目を見張るべきは Colvin et al. (2014) です。この研究では MIT の物理学入門の MOOC 講座での「概念学習」が調査されました。この研究では MOOCs 講座での様々な受講者の学習実績を、物理や数学の知識を持たない人々と、既に十分な知識を持っている物理教員のような人々との間で比較しただけでなく、従来型の大学内授業で同じカリキュラムを受講した学生たちの学習実績とも比較しています。その結果、どの組み合わせの間でも本質的な学習量に大きな違いは見られなかったのですが、学内での授業を受けた学生というのは、前の学期の授業を修了できず、再履修していたという学生だったということは述べておく必要があるでしょう。

この調査は、教育テクノロジーにおける比較研究の結果として、それほど大きな違いは得られないということを示す典型例です。他にも学習者の属性が違うといったような多様性があるのですが、これは配信方法(講義か MOOC か)と同様に重要な要素でした。また、この MOOC の設計は、一定の考えに基づいて作られた質問に対する正しい答えを出せるかどうかに重点を置いた、行動主義的〜認識主義的な学習アプローチをとるものであり、第1章で述べた、デジタル時代に必要なスキルの育成を目指しているわけではありません。

MOOCs 内での学習者の実体験についての研究、特に MOOCs を使ったディスカッションに関する研究は、例えば Kop (2011) のようにたくさん存在します。 例外はありますが、一般的に MOOCs ではディスカッションは監視されておらず、他の受講者と繋がったり回答したりすることは受講者に任されています。しかし学術的な学びに必要な高レベルの概念分析能力を育成する際に MOOCs のディスカッションの有効性から判断することについては強い批判もあります。深い概念学習を行うには通常、学習者に対して、誤解や思い違いを正すための的確なフィードバックを与えるとともに、論拠の提示や議論の明確さといった、学術的な学びの基準が満たされているかを確実にすることが求められるため、専門家による介入が必要とされます。また、より深く理解するために必要な情報の提供と指導の機会を設けておくことも必要です (Harasim, 2013) 。

そして教員からの介入がなければ、あるいは内容が難しければ、講座の規模が大きくなればなるほど受講者は「過負荷、不安、喪失感」を感じる可能性が高くなります (Knox, 2014)。Firmin et al. (2014) が示しているのは、教員による「励まし、そして学習者の努力と関与への支援」があれば、MOOCs 講座に参加している全員にとって、良い結果に繋がるということです。専門家が行うべき役割を担わなければ、他の受講者からのコメントやフィードバックという点で、受講者は質的に多様な情報に立ち向かうことになります。また、協働的・協調的なグループ学習の成功に必要な条件に関する研究がたくさん存在しているのですが(例えば Dillenbourg (1999) や Lave and Wenger (1991) )こうした知見はこれまで一般的に MOOCs におけるディスカッションの管理にほとんど活かされていません。

反論の1つとして、少なくとも cMOOCs ではネットワーキングやコラボレーションに基づいて、学術的な学びとは本質的に異なる、新しい形態の学びを生み出している、したがって MOOCs はデジタル時代の学習者のニーズに適合しているのだというものがあります。特に成人の参加者は、Downes and Siemens の主張によれば、高いレベルの概念学習を身につける手立てを自己管理することができます。MOOCs は「需要」に基づくものであり、同じようなことに関心を持つ他の学習者や、自らの学習を支援してくれる専門家を探しているという個々の学生の関心を満たしているのです。また、多くの人にとっては、深い概念学習の必要性はこの関心に含まれないのかもしれません。おそらくそこに含まれるのは、事前に持っていた知識を新しい特定の文脈でうまく活かしたいという気持ちなのです。MOOCs が特に有効に機能するのは既に高水準の教育を受けている人々に対してのようです。そして正式な教育で習得した多くの概念的スキルを MOOC に参加する時に持ち込んでくれることから、そのような事前の知識やスキルを持っていない人々への手助けにも貢献するのです。

時間の経過とともに経験が蓄積されつつあり、MOOCs は小規模なグループ作業に関する研究から得られた知見のいくつかを、大人数のグループ作業にも取り込み、応用しているようです。例えば MOOCs の中には「ボランティア」として学習共同体の指導者を利用しているものがあります (Dillenbourg, 2014) 。米国国務省は MOOCs 参加者を育成するために、使節団や領事館を通じて MOOCs 合宿を開催してきました。この合宿にはフルブライト奨学生や大使館職員が含まれており、海外からの MOOC 参加者のために講座の内容やトピックについて率先した議論を行なっています (Haynie、2014) 。ブリティッシュ・コロンビア大学など一部の MOOCs 提供校では教育助手の小集団に対して、MOOCs 上のフォーラムに目を配り、貢献するために手当を支払っています (Engle, 2014) 。Engleは、限定的とは言え効果的であった教員たちによる介入の他に教育助手を活用することで UBC MOOCs はよりインタラクティブで魅力的なものになったことを報告しました。ただし誰かにお金を支払って MOOCs を巡視や支援してもらうには当然ながら提供校へのコストを増加させます。ですから、MOOCs で非常に大規模なグループでのディスカッションを効率的に管理するためには、新しい自動化技術の開発が欠かせません。エジンバラ大学ではオンライン上のディスカッション・フォーラムを巡回し、支援や励ましが必要であると判断された学生に、予め用意されたコメントを直接送信する自動「教員ボット」の実験をしています (Bayne, 2014) 。

これらの結果と手法は、単位が発行されるオンライン学習にとって教員の存在が成功のための重要な鍵となるという先行研究と一致しています。しかしその一方で、まだ学生に備わっていない深い概念学習を定着させるのに必要な支援と構造化を MOOCs が提供することになるのであれば、やるべきことはまだたくさんあります。デジタル時代に必要なスキルの育成は、膨大な数の参加者を扱うならば、さらに大きな課題となる可能性があります。参加者たちがどのような条件の下で、実際に MOOCs から何を学んでいるのか、確固たる結論を引き出す前に、もっと多くの研究が必要でしょう。

5.4.6 評価

MOOCs に参加する膨大な数の受講者を評価することが大きな課題であることは明白です。複雑な課題ではありますが、ここでは簡単な説明にとどめます。ただしセクションA.8では、様々な種類の評価について一般的な分析を示します。また Suen (2014) は、これまでに MOOCs で用いられてきた評価について、包括的でバランスのとれた概要を説明しています。本節は Suen の論文に大きく依拠しています。

5.4.6.1 コンピュータによる採点評価

今日に至るまでの MOOCs における評価は、主に2種類あります。 1つ目は、定量的に測定できる多肢選択問題や、数式または「正しいコード」を入力して自動的にチェックできる回答ボックスに基づくものです。通常、受験者には採点された回答の種類に応じて、正解・不正解といった単純なものから、より複雑なものまで、即時フィードバックが与えられますが、全ての場合において、このプロセスは完全に自動化されています。

事実や公理、公式、方程式、あるいは明確で正しい答えがあるような形式の概念学習について直接テストする場合、この方法はうまくいきます。実際、オンライン上でただちにフィードバックを与える仕組みはなかったものの、1970年代というかなり以前から、イギリスのオープン大学では多肢選択問題のコンピュータによる自動採点が行われていました。ただし、この評価方法は深層的または「変容的」な学習のテストでは十分機能するとは言い難く、特に創造的思考や独創的思考など、デジタル時代に必要な知的スキルの評価には適していません。

5.4.6.2 相互評価

MOOCs で試みられている2番目のタイプの評価は、参加者がお互いの作業を評価する方法です。相互評価は新しいものではありません。この評価法は伝統的な教室での形成的評価や、単位取得ができる一部のオンライン教育でうまく使われてきました (Falchikov and Goldfinch, 2000; van Zundert et al., 2010) 。さらに重要なことですが、相互評価は学習者が他者の成果物を評価する過程を通して、深い理解と知識を向上させることができる強力な方法であると考えられてきました。そしてこの方法はデジタル時代の学習者が他者を評価するために必要な批判的思考のようなスキルを育成することにも役立ちます。

しかし相互評価がうまく機能するには、教員が採点指標、ルーブリック(確立された指示書き)、評価基準の提供に密接に関わり、学生の評価について、教員が定めた採点指標の範囲での一貫性が保たれているかを確認し、必要に応じて修正することが重要なのです。教員は MOOCs 上に採点指標やルーブリックを提供することはできますが、不可能ではないにしても多数の受講生が相手では、複数の相互評価の綿密なモニタリングは困難です。そのため MOOC 受講者は、成果物を「公正」に、あるいは正確に評価するだけの知識や能力を持っていないかもしれない、あるいは全く持っていない他の受講生から、無作為に評価されることに腹を立ててしまうことが多いのです。

MOOCs における相互評価の限界を回避するため、全採点の平均化に基づく調整型相互評価やベイズ推定モデル (Piech et al., 2013) など、様々な試みが取り入れられてきました。しかし、こうした統計的なテクニックを使うことで相互評価のエラーを減らすことができたとしても(あるいは増やしてしまったとしても)評価者の思い違いによる判断ミスの問題を解決するまでには至っていません。特に受講生の大半が MOOC 講座で学ぶ重要な概念を理解できていない場合には大きな問題になります。このような場合に相互評価を取り入れたとしても、盲人が盲人の手を引く状態になってしまいます。

5.4.6.3 エッセイの自動採点

これも採点を自動化する数々の試みが行われてきた分野の1つです (Balfour, 2013) 。この手法は徐々に高性能になってきていますが、現在のところ正確な評価に関して文法や綴り、文章構成のような、主として技術的なライティング能力の測定にとどまっています。残念ながらここでも、高い水準の知的スキルが表現されているエッセイを正確に測定しているわけではないのです。

5.4.6.4 電子バッジと修了証

特に xMOOCs では、講座の到達度を測定する最終試験(通常は機械採点)に基づいて、受講者に修了証や「電子バッジ」が付与されることがあります。

アメリカで認定された学位授与機関の学長から成るアメリカ教育評議会 (ACE) は、Coursera の MOOCs プラットフォームで5つの講座について単位認定の推薦を提議しました。しかし審査の責任者 (Book, 2013) は次のように述べました。

ACE 設置認可が行なっているのは、既に認定を受けている機関から提供される講座であることを認定しているだけです。その審査は学習成果を評価するものではなく、講座の内容に焦点を当てたものであるため、学習成果の教育学的な有効性に関する全ての疑問については不問としているに過ぎません。 

実際、MOOCs を提供している教育機関のほとんどは、自分たちが発行した修了証を入学や学内プログラムの単位として認めていません。このように MOOCs 提供校であっても自分たちの教育に自信が持てないことほど、MOOCs での評価の質について雄弁に物語っていることはないでしょう。

5.4.6.5 評価の裏側にある意図

MOOCs における評価を議論の対象とするには、評価の背後にある意図を精査する必要があります。評価の背後には様々な異なる目的があります。(セクションA.8を参照)相互評価と機械による自動採点で得られる即時的なフィードバックは、形成的評価にとって非常に有益です。受講者は自分たちが理解したことを確認し、重要な概念についての理解を深めるのに役立てることができるからです。一方、cMOOCs における学びは Suen が指摘するように、受講者間で行われるコミュニケーションとして測定されるので、知識の検証は cMOOCs 上の仲間たちの採点に委ねられます。つまり cMOOCs に参加した全ての受講者が正しいと信じるものを足し合わせた結果ですから、正式な評価は不要なのです。ただしこのようにして学んだことは必ずしも「学術的に」検証された知識にはならないのですが、公正を期すために書き添えるならば、そもそも「学術的な正しさ」は cMOOCs 支持者の関心事ではありません。

学業評価は、学生の学力の測定だけでなく、学生の流動性(大学院への入学など)、そしてさらに重要なこととして、雇用機会と昇進にも影響する一種の通貨です。学生の視点に立った場合の通貨の妥当性とは、認定が正当か否か、そして移転が可能であるか否かということが欠かせません。これまでのところ MOOCs は考え方や原理、プロセスに関する理解と知識の評価(これだけでも価値あることだと思いますが)を超えた、受講者の学習成果を正確に評価できることの論証はできていません。MOOCs が論証することができたのは、デジタル時代に必要とされる深い理解、知的スキルの開発や評価することはできていないということです。 確かに、これは MOOCs と他の形態のオンライン学習とを分かつ特徴である、大規模性という制約がある中では不可能なのかもしれません。

5.4.7 知名度の向上

MOOCs に対して教育機関が寄せている期待についての調査で、 Hollands and Tirthali (2014) はブランドの構築と維持が MOOCs を立ち上げる上で2番目に重要な理由であることを見出しました。(最も重要なのは勢力範囲を広げることであり、それも部分的な知名度の向上の試みと捉えることもできるでしょう。)MOOCs の利用による教育機関の知名度の向上は、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学など精鋭が集まるアイビー・リーグの大学が先導しているほか、Coursera は基盤システムへのアクセスを「トップクラスの大学」のみに制限しています。MOOCs を開始した多くの大学はしばらくの間、単位取得できるオンライン学習コースへの移行を見送っていたため、先陣的効果を与える結果となりました。MOOCs は実際には遅れてやってきたエリート教育機関が、オンライン学習の「先駆者」という行列の先頭に一気にジャンプするための手段を提供したのです。

特定分野の専門知識をMOOCs を使うことで、これまでよりもはるかに広い範囲に向けて公開することは明らかに理にかなっています。アルバータ大学における恐竜学、MITにおける電子工学、ハーバード大学における古代ギリシア英雄について学習する MOOCs 講座がこれらの例です。間違いなく MOOCs は教員個々人の知識の質を広げるのに有用です。一般的に教員は生涯、大学の中だけで教えるよりも MOOCs 講座を通じて多くの学生に知識を届けることに喜びを覚えるものです。そして MOOCs は教育機関が提供する講座やプログラムの質をちょっとだけ見せるための良い方法でもあります。

しかし MOOCs が実際に知名度の向上に与える影響を測定することは困難です。Hollands and Tirthali は次のように指摘します。

MOOC に関連する活動の結果、多くの機関がメディアから大きな注目を集めていますが、こうした新しい決断が知名度の向上に及ぼす影響を切り分けて測定することは困難である。ほとんどの教育機関は、知名度の向上に関するメリットをどのように把握し、定量化するかについて考え始めたばかりだ。

とりわけ上位レベルの教育機関は、既に優秀な学生を惹きつける魅力を持っていますので、正規の大学プログラムへの応募者数を増やすためには MOOCs は必要ありません。これまでのところ、このような教育機関が MOOCs の修了を正課の学位プログラムへの入学に認めている例はないのです。

そして、他の全ての機関が MOOCs を提供し始めると、知名度の向上の効果は次第に頭打ちになります。実際、ジョージア工科大学の MOOCs 講座の1つが突然破綻した時のように (Jaschik, 2013) 、質の低い教育や授業計画を何千人もの人々に公開することは、教育機関の知名度に悪影響をおよぼす可能性があります。しかし、概して、ほとんどの MOOCs は他の形式の教育や広報活動の利用よりも、多くの人々に対して知識や専門的な知見を広めるといった点で、学校の評判を高めることに成功しています。

5.4.8 費用と経済規模

Print

The MOOC value proposition is that MOOCs can eliminate the variable costs of course delivery. Image: © OpenTuition.com, 2014
図5.4.8 MOOCs の価値が示す問題は、MOOCs によって講座配信にかかる変動費を無くすことができるかどうかという点です。(© OpenTuition.com, 2014)

Print

MOOCs の主な強みの1つは、参加者が無料で MOOCs を利用できることです。繰り返しになりますが、このことは現実的にというよりも、原理的にそうであると言えます。というのも MOOCs を提供する側は、特に評価にかかる費用として、一定の料金を請求しても良いのです。そして MOOCs は参加者には無料であるかもしれませんが、提供する側にはかなりの費用がかかります。また xMOOCs と cMOOCs とでは費用には大きな違いがあります。後者の開発にかかる費用は一般的に言えばはるかに安上がりですが、たとえ cMOOCs であっても開発費用がかかる可能性や、実際にかかっている場合があります。

MOOCs の費用について現段階では決定的な結論を引き出せる十分な事例がないため、MOOCs の設計と提供にかかる実際の費用についてはこれまでのところほとんど情報がありません。しかしデータならあります。オタワ大学 (University of Ottawa, 2013) は、Coursera が大学に提供した数字と、単位取得できるオンライン講座の開発コストに関する知見に基づいて、xMOOCs の開発費用を約10万ドルと見積もりました。

Engle (2014) は、ブリティッシュ・コロンビア大学が提供する5つの MOOCs 講座の実際の費用について報告しています。(実は UBC MOOCs の講座数は4つだったのですが、そのうちの1つが2パートに分割されていたのです。)UBC MOOCs には、他の MOOCs には必ずしも当てはまらない2つの重要な特徴があります。 第一に、UBC MOOCs はスタジオを用いた本格的な制作環境からデスクトップ録画まで、多種多様な動画制作方法を利用していたため、開発費用は動画制作技術の高度さによってかなり異なります。第二に、UBC MOOCs は、オンライン上の議論に目を配り、学生からのフィードバックを受けて授業教材を調整または変更する有給の学術助手を多用したため、同様にかなりの配信費用がかかりました。

UBC 報告書の付録Bには、合計の試算として 217,657 ドルと記載されていますが、これは学術的な支援、つまりおそらく最も重要な費用である教員の時間コストを除外しています。学習支援は初年度の総費用の 25% に達しました。(教員の費用を除く)。報告書の図1の動画教材制作費(95,350ドル)と動画教材制作に費やされた費用の割合(44%)から計算すると、教員の費用と運営費用(プログラム管理や諸経費)を除いた直接経費は 216,700ドル、つまり MOOC 講座1つあたり、有給の学術助手の費用も含め、約 54,000ドルと推定されます。一方で、費用の範囲も同じくらい重要です。集中的にスタジオ制作を利用した MOOCs の動画制作費は、他の1つの MOOC の動画制作費の6倍以上でした。

単位取得を目的としたオンライン講座および遠隔教育における主なコスト要因や不確定要素は、Rumble (2001) および Hülsmann (2003) による先行研究から比較的明らかになっています。 私は同様の原価計算方法を用いて、ブリティッシュ・コロンビア大学のオンライン修士課程の7年間にわたる費用を追跡し、分析しました (Bates and Sangrà, 2011) 。このプログラムでは、主に学習管理システムを中心的なテクノロジーとして利用し、教員が講座を開発し、オンライン上での学習者サポートと評価を提供したほか、登録者数が多いときは追加で補助教員からの助けを得ました。

私がUBCプログラムの費用を分析したところ、2003年の開発費用は1講座あたり約2万ドルから2万5千ドルだったことが分かりました。しかし7年間かかった講座の開発費用は全体の15%未満であり、主にこのプログラムの最初の1年程度の時に発生しました。オンラインでの学習者サポートと学生評価の提供を含む配信費用は合計の3分の1以上を占め、当然のことですが講座が提供される年ごとに発生しました。このように、単位取得のできるオンライン学習では、配信費用はプログラムが存続する期間にわたって開発費用の2倍以上になる傾向があります。

MOOCs 、単位取得のできるオンライン授業、そして大学で行われる教育の主な違いは、MOOCs の場合、学習者サポートや教員による評価がありませんので、実際上はそうでない場合があるにしても、原則として全ての配信費用を削減できることです。

xMOOCs の提供には明らかに多大な機会費用が含まれています。当然と言えば当然ですが、MOOCs 講座の提供に際しては最も高く評価されている教員が関わります。大規模な研究大学では、そのような教員の授業負担は最大でも年間4〜6科目でしょう。ほとんどの教員は MOOCs に無償で関わってくれますが、教員の時間は有限です。それは、少なくとも1学期分の授業負担の1科目分(授業負担の25%以上に相当)を割いてしまうこと、または研究に費やされる時間が xMOOCs の開発と配信に奪われることを意味します。さらに、5〜7年程度は行われる単位取得可能な授業とは異なり、MOOCs 講座では多くの場合、一度か二度しか開講されません。

しかし xMOOCs の開発費用は、MOOCs 講座を担当する教員の時間分を除外したとしても、動画を利用しますので、学習管理システム(LMS)を利用した単位取得可能なオンライン授業の開発費用のほぼ2倍になる傾向があります。教員にかかる費用を含む場合、とりわけ教員に必要な MOOC 講座で公開する授業実践に費やす余計な時間、例えば動画撮影のためのリハーサルの時間などを考えると、xMOOCs の製作費用は同じ長さの授業時間の単位取得可能なオンライン授業と比べると3倍近くにもなります。xMOOCs でのコンテンツ配信には動画の代わりに LMS などの安価な方法の利用や、講義録画システムを使った教室講義の動画を再編集することもできますし、実際に行われている事例もあります。

そうは言っても、学習者サポートや学術的な支援を必要としなければ、MOOCs の配信にかかる費用はゼロであり、ここに節約できる大きな可能性があります。つまり受講者1人当たりの費用を計算した場合、単価は非常に低くなります。コースの修了証明書を取得した学生1人当たりの費用で計算したとしても、オンラインまたは大学内の授業で優等な学生の費用よりもはるかに安上がりです。ひとつの MOOCs 講座の開発に約10万ドルかかり、5,000人の参加者が修了証明書を手にした場合、学生1人当たりの平均費用は20ドルです。しかし MOOC の受講生と大学院修士課程の学生では同じ種類の知識とスキルがあると評価することが当然のはずですが、このようなことは通常ありません。

ここで問題となるのは MOOCs が学習者サポートも人間による評価にかかる費用もなく成功するかどうか、あるいはこちらの方が一般的な判断基準ですが、学習の質を損なうことなく、MOOCs による「自動化」で教育配信にかかる費用を大幅に削減できるかどうかです。しかし現在のところ、高次の学習能力と「深い」知識という観点からは、MOOCs でこのようなことが可能であるという証拠は何もありません。このような種類の学習を評価するには、知識を測るための課題を準備する必要があります。また、通常そのような課題の評価には人間による採点が必要となり、結果として費用がかかることになります。そして、これまでうまくいっているオンライン単位取得プログラムの先行研究では、オンラインにおける教員の積極的な参加がオンライン学習を成功させるための重要な要素であることが分かっています。ですから、適切な学習者サポートと評価は MOOCs にとって依然、大きな課題なのです。MOOCs はある程度の知識を教えるのには良い方法なのですが、他の種類の知識を教える際には、遅かれ早かれ大きな構造上の問題にぶつかります。残念ながら、MOOCs で教えるのが難しいのはデジタル時代で最も必要とされる種類の知識なのです。

持続可能なビジネス・モデルの観点から、私立財団からの多額の寄付や基金から支出することで、優秀な大学は xMOOCs に移行することができましたが、ほとんどの教育機関ではこのような形での資金調達は困難です。Coursera と Udacity にとっては MOOCs 提供機関にプラットフォーム利用料を課したり、バッジや証明書の発行に課金したり、受講者データを販売したり、企業からスポンサー料を集めたり、直接広告を掲載したりするなど、様々な方法を取り入れることで、成功するビジネス・モデルを創り出す機会があります。

しかし特に公立の大学では、これらの収入源のほとんどは利用できない、あるいは許可されていないため、たとえ MOOCs で使われる素材を学内の授業で再利用する場合でも、MOOCs への多額の投資をどのように回収すれば良いか、見通しは不明です。MOOC 講座を提供するたびに、オンライン単位取得プログラムに回せる労力や資金が奪われるのです。そのため教育機関は、オンライン学習のための資金をどこに投資するかについて、難しい決断を迫られています。MOOC 講座を首尾よく修了できた時に単位を付与する何らかの適切な方法が見つからない限り、乏しい資金を MOOCs に投じるという決断は困難です。

5.4.9 MOOCs の長所と短所のまとめ

本章で分析した MOOCs の長所と短所に関する要点は次のようにまとめることができます。

5.4.9.1 長所

  • MOOCs、特に xMOOCs は、コンピュータとインターネット接続を有している人であれば誰にでも、世界最高峰の大学から良質な教育コンテンツを無料で受け取ることができます。
  • MOOCs は、特に発展途上国において、高品質の教育コンテンツへの道を開くことに役立ちますが、それを成功させるには、かなりの現地適応と、地域による支援、そして提携校への多額の投資が必要になります。
  • MOOCs は、基本的な概念の学習や、関心に基づく大規模なオンライン・コミュニティの形成に役立ちます。
  • MOOCs は、生涯学習や継続的な教育においては、非常に価値のある形態です。
  • MOOCs は、従来型の、特に優秀な教育機関に対して、オンラインおよびオープン・ラーニングに向けた戦略を再検討せざるを得ない状態に追い込んでいます。
  • 教育機関は、特定の学問分野における専門性と卓越性をオープンにすることによって、自らのブランドと地位を向上させることができました。
  • MOOCs の主要な価値提案は、コンピュータによる自動化や受講生同士のやり取りを通じて、学習者へのサポートや質の高い評価を提供する際に高等教育機関に生じる、非常に大きな変動費を削減することです。

5.4.9.2 短所

  • MOOCs の登録者数が膨大であることに誤解を招く恐れがあります。積極的に参加しているのは登録者の半数以下でしかなく、その中でもわずかな割合しか講座を修了していません。このような現実があるにもかかわらず、実際の登録者数は従来の講座よりもはるかに多いのです。
  • MOOCs の開発は高価であり、MOOCs プラットフォームを提供する営利組織には、持続可能なビジネス・モデルを創り出す機会があるのですが、公的資金に基づく高等教育機関にとっては、持続可能なビジネス・モデルとして MOOCs をどのように開発できるかを予見するのは困難です。
  • MOOCs は、教育機会の拡大というよりも、既に高度な教育を受けている人たちに歓迎される傾向があります。
  • これまでのところ MOOCs は、高いレベルの学術的学習や、知識基盤型社会で必要とされる高いレベルでの知的スキルの育成には限界があります。
  • 多くの教育機関にとって、自分たちの提供する MOOCs 講座では、より高いレベルの学習を終えた評価として信頼できないということは、課題として残り続けるでしょう。
  • MOOCs の教材をオープンな教育リソースとして再利用するには、著作権や時間的制約のような理由により限界があります。

アクティビティー 5.4 MOOCs の長所と短所を考える

  1. あなたは、MOOCs が単に放送教育の別形態にすぎないという論点に同意しますか。その理由は何ですか。
  2. xMOOCs の費用と、単位認定されるオンライン授業の費用を比べることは合理的でしょうか。両者は同じ資金をめぐって競合しているでしょうか。それとも両者の資金や目標は全く異なるでしょうか。もしそうであるなら、どのような点が異なるでしょうか。
  3. cMOOCs は xMOOCs よりも優れていると主張できるでしょうか。それとも比べるには違いすぎるのでしょうか。
  4. 講座をきちんと修了した受講者1人あたりの費用で判断すると、MOOCs は対面式またはオンラインの単位認定コースよりも明らかに安くなります。これは公平な比較と言えるでしょうか。公平と言えないのであれば、なぜでしょうか。
  5. MOOCs 講座をきちんと修了した学生に対して、教育機関は単位を与えるべきだと思いますか。もしそうなら、なぜですか。そしてこの関係から読み取れることは何ですか。

参考文献

Balfour, S. P. (2013) Assessing writing in MOOCs: Automated essay scoring and calibrated peer review Research & Practice in Assessment, Vol. 8.

Bates, A. (1985) Broadcasting in Education: An Evaluation London: Constables

Bates, A. and Sangrà, A. (2011) Managing Technology in Higher Education San Francisco: Jossey-Bass/John Wiley and Co

Bayne, S. (2014) Teaching, Research and the More-than-Human in Digital Education Oxford UK: EDEN Research Workshop (keynote: no printed record available)

Book, P. (2103) ACE as Academic Credit Reviewer–Adjustment, Accommodation, and Acceptance WCET Learn, July 25

Colvin, K. et al. (2014) Learning an Introductory Physics MOOC: All Cohorts Learn Equally, Including On-Campus Class, IRRODL, Vol. 15, No. 4

Dillenbourg, P. (ed.) (1999) Collaborative-learning: Cognitive and Computational Approaches. Oxford: Elsevier

Dillenbourg, P. (2014) MOOCs: Two Years Later, Oxford UK: EDEN Research Workshop (keynote: no printed record available)

Engle, W. (2104) UBC MOOC Pilot: Design and Delivery Vancouver BC: University of British Columbia

Falchikov, N. and Goldfinch, J. (2000) Student Peer Assessment in Higher Education: A Meta-Analysis Comparing Peer and Teacher Marks Review of Educational Research, Vol. 70, No. 3

Firmin, R. et al. (2014) Case study: using MOOCs for conventional college coursework Distance Education, Vol. 35, No. 2

Harasim, L. (2012) Learning Theory and Online Technologies New York/London: Routledge

Haynie, D. (2014). State Department hosts ‘MOOC Camp’ for online learners. US News,January 20

Hill, P. (2013) Some validation of MOOC student patterns graphic, e-Literate, August 30

Ho, A. et al. (2014) HarvardX and MITx: The First Year of Open Online Courses Fall 2012-Summer 2013 (HarvardX and MITx Working Paper No. 1), January 21

Hollands, F. and Tirthali, D. (2014) MOOCs: Expectations and Reality New York: Columbia University Teachers’ College, Center for Benefit-Cost Studies of Education

Hülsmann, T. (2003) Costs without camouflage: a cost analysis of Oldenburg University’s  two graduate certificate programs offered  as part of the online Master of Distance Education (MDE): a case study, in Bernath, U. and Rubin, E., (eds.) Reflections on Teaching in an Online Program: A Case Study Oldenburg, Germany: Bibliothecks-und Informationssystem der Carl von Ossietsky Universität Oldenburg

Jaschik, S. (2013) MOOC Mess, Inside Higher Education, February 4

Knox, J. (2014) Digital culture clash: ‘massive’ education in the e-Learning and Digital Cultures Distance Education, Vol. 35, No. 2

Kop, R. (2011) The Challenges to Connectivist Learning on Open Online Networks: Learning Experiences during a Massive Open Online Course International Review of Research into Open and Distance Learning, Vol. 12, No. 3

Lave, J. and Wenger, E. (1991). Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation. Cambridge: Cambridge University Press

Milligan, C., Littlejohn, A. and Margaryan, A. (2013) Patterns of engagement in connectivist MOOCs, Merlot Journal of Online Learning and Teaching, Vol. 9, No. 2

Piech, C., Huang, J., Chen, Z., Do, C., Ng, A., & Koller, D. (2013) Tuned models of peer assessment in MOOCs. Palo Alto, CA: Stanford University

Rumble, G. (2001) The costs and costing of networked learning, Journal of Asynchronous Learning Networks, Vol. 5, No. 2

Suen, H. (2104) Peer assessment for massive open online courses (MOOCs) International Review of Research into Open and Distance Learning, Vol. 15, No. 3

University of Ottawa (2013) Report of the e-Learning Working Group Ottawa ON: The University of Ottawa

van Zundert, M., Sluijsmans, D., van Merriënboer, J. (2010). Effective peer assessment processes: Research findings and future directions. Learning and Instruction, 20, 270-279

License

Icon for the Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License

デジタル時代の教育 by Anthony William (Tony) Bates is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License, except where otherwise noted.

Share This Book