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Figure 11.4 Work in a team Image:
図11.5  チームで作業する

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質を保証するための強力な手段の1つはチームで作業することです。このことについてはセクション8.7セクション9.4セクション12.3セクション12.5で触れています。

11.5.1 なぜチームで作業するのか

多くの教員にとっての教室での指導は、教員と学生の間での個人的な、そして大部分において他人からは干渉されない活動です。教えることは個人的な活動です。しかしブレンド型、中でも完全オンライン型の学習は、教室内で教えることとは違います。オンライン型の学習においては、教員、特にオンラインを用いた教育を始めたばかりの人にはない、少なくとも完成してすぐに使える形としては持ちあわせてはいない、幅広いスキルが必要になります。

教員が行うオンラインでの交流は教室内でのものとは異なった形で行わなければなりません。特に、学生に対して適切なオンライン活動を提供し、非同期のオンライン環境で学習が促進できるような方法でコンテンツを構成することに注意しておく必要があります。デジタル時代に必要な知識やスキルを育成するという観点において、クオリティーを高めるためには、良いコース設計が必要不可欠です。これは教育学的な問題であり、大学教員が研修を受けることはほとんどありません。また、テクノロジーに関する問題でもあります。例えば、経験のない教員は、グラフィックや動画を作成するときに誰かの手助けが必要になるでしょう。

チームで作業をするもう1つの理由は、負担を適切に管理するということです。通常、教室で教える教員にとっては必要ありませんが、テクノロジーを用いた様々な活動があります。テクノロジーを使いこなすだけでも、教員が一人でやらなければいけないのであれば、それは余分な仕事になってしまいます。また、あるコースにおいて、オンライン授業の設計に問題があって対面授業とうまく噛み合っていないとき、学生が何をすれば良いか分からないとき、教材が理解しにくい方法で提示されているときなどには、学生から届く問い合わせのメールに忙殺されてしまうことでしょう。コース設計とテクノロジーに関する研修を受けたインストラクショナル・デザイナーがそれぞれのコースで活動することができれば、はじめてオンラインで教える教員にとっては大きな助けとなるでしょう。

また、同じ学科でオンライン学習の経験がある同僚と一緒に作業することができれば、時間をかけずに高いクオリティーに達することができ、時間も節約できるでしょう。例えば私が働いていたある大学では、同じ学科の3人の教員がそれぞれ別のコースでオンラインの素材を利用して授業を作っていました。しかし3つのコースで同じ装置の画像が必要になるということが頻繁にありました。そこで3人の教員が集まってグラフィック・デザイナーと一緒に、クオリティーの高いグラフィックを作成して共有することにしました。共有することによりコースに重複がないか、そしてどのように3つのコースをうまく統合し、一貫性を保つかという議論にもなりました。このような共有は教室よりもオンラインのコースで行う方が簡単です。なぜならオンラインの教材では簡単に共有や観察ができるからです。

最後に、大規模の講義を設計し直すときには、ティーチング・アシスタント (TA) たちの研修や編成、管理が必要になってくるかもしれません。非常勤教員が関与する場合もあるでしょう。このように多くの人が関わる場合には、専任教員、非常勤教員、契約教員、TA、学習テクノロジーのサポート・スタッフなど、それぞれの役割を明確にしておかなければいけません。

多くの教員にとって、チームで作業をするということは、今までとは異なる文化を体験するようなものです。ですが、オンラインやブレンド型学習において、このような作業を行うメリットを考えれば、試してみるだけの価値はあります。教員がこのようなテクノロジーを用いた教育様式に慣れてくれば、インストラクショナル・デザイナーの助けを借りる必要もなくなってくるでしょう。しかしチームで作業をする方が効率的なので、経験のある教員であったとしても、チームで作業をすることを好む人もたくさんいます。

11.5.2 チームに誰を加えるか

これはコースの規模にもよります。教員1名あるいはその分野の専門家、そして適正人数程度の学生がいるブレンド型あるいはオンラインのコースにおいて、多くの場合、インストラクショナル・デザイナー1名と一緒に作業をします。必要であれば Web デザイナーやグラフィック・デザイナー、あるいはメディア・プロデューサーとも作業をします。

もしもコースを複数の教員(非常勤教員や TA も含む)が担当し、多くの学生がいる場合には、全員がインストラクショナル・デザイナーと一緒にチームとして作業する必要があるでしょう。また図書館員を重要なメンバーとしてチームに加える場合もあります。図書館員は素材を探す、著作権処理の問題を扱う、そしてコースが開講されている間、学習者のニーズに応える場所として図書館を提供するといった面で手助けしてくれます。

11.5.3 アカデミックの自由はどうなるのか。チームで作業をすると自由は失われてしまうのか。

そんなことはありません。教員は常に内容や教え方について最終的な決定権を持っています。インストラクショナル・デザイナーはあくまでもアドバイザーであり、コースのコンテンツ、教え方、評価方法などの責任は教員が持たなければいけません。

かといってこれらの人を利用人のようにこき使ってはいけません。むしろ特殊な技能を持った専門家なのです。ですから意見には敬意を持って耳を傾ける必要があります。インストラクショナル・デザイナーはブレンド型あるいはオンライン学習において、何がうまく行き、何がうまく行かないかということに関しては、より多くの経験を持っていることもあります。外科医は麻酔医、看護師と共同作業をしますが、業務を適切に行なってくれることを信じています。教員とインストラクショナル・デザイナーやメディア・プロデューサーとの関係も同じであるべきです。

11.5.4 最後

ブレンド型あるいはオンラインのコースにおいて、チームで作業をするメリットはたくさんあります。通常はインストラクショナル・デザイナーの専門分野ですが、上手にコースが設計されていれば、学習者がより良く学ぶことを可能にするだけではなく、教員の負担を調整してくれることにもつながります。グラフィックや Web デザイン、専門性の高い動画などがあれば見栄えもよくなるでしょう。専門家からテクノロジーに関するサポートをしてもらうことで、教員は教えることに集中できるのです。これでもまだチームで作業することを嫌う理由はありますか。

もちろんそれぞれの機関において、このようなサポートが教育・学習センターで、どのように提供されているかは異なります。しかしコース設計を始める前に考えておかなければいけない重要なポイントだと言えるでしょう。

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デジタル時代の教育 by Anthony William (Tony) Bates is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License, except where otherwise noted.

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