86

Print

Figure 11.9.1 Structure is critical for a quality course or program Image: © Arisean Reach, 2012
図11.9.1 良いコースやプログラムには良い構造が必要不可欠
画像: © Arisean Reach, 2012

Print

学生に対して構成のしっかりした学習を提供し、適切な学習活動を設定することは、クオリティーの高い教育・学習を行うためのステップの中でも最も重要です。しかし、質保証に関する文献においてはほとんど議論されていません。

11.9.1 指導の構成に関する一般的考察

構成は学習者の成功に影響を与える主な要素の1つですが、対面やオンライン指導のどちらにおいても直接扱われることは滅多にありません。まずはことばの定義をすることが必要でしょう。

構成 (structure) という語について、3冊の辞書での定義は以下の通りです。

  1. いくつかの部品から作られ、それらが特定の方法で固定される、もしくは組み合わせられることで完成するもの。
  2. 全体を形成するために、部品が配列された、もしくは組み合わせられた方法。
  3. ある複合体における部品の相互関係や配置。

指導の構成には2つの重要かつ関連した要素があります。

  • カリキュラム(コンテンツ)の選択・分解・配列
  • 教員の慎重な判断に基づいた学生が行う活動の構成(スキルの育成・評価)

つまり指導の構成がきちんとできている場合、学生は何を学ぶ必要があり、それを学ぶためには何をやるべきか、そして、いつどこでそれを行うべきかが分かります。一方、指導の構成がしっかりしていないと、学生が行う活動の自由度が高く、教員によるコントロールは少なくなります。(学生自身が自律的に学習をきちんと構成していくという場合もあります。)どのように指導を組み立てていくかの選択によって、学生だけでなく教員がどのような活動を行わなければいけないかが決まってきます。

定義という観点から言えば、本質的には指導の構成がきちんとできている方が良いというわけではありません。そしてこのことは対面・オンライン授業のどちらと結びついているというわけでもありません。特に、教える際にどのような構成を選ぶかは状況次第です。クオリティーの高い教育・学習を行うためには最も適切だと思われる指導の構成を選択しなければいけません。オンライン指導における最適な構成は、対面授業のものといくつか共通の特徴を持っている一方で、異なる点も多々あります。

指導の構成を決定する主な要素は以下の3つです。

  1. 所属教育機関の要求による構成
  2. 教員が好む指導上の理念
  3. 教員が把握している学生のニーズ

11.9.2 教育機関が対面指導の構成に関して行う要求

教育機関が対面指導に課している構成は馴染みがありすぎることから、逆に気づかれなかったり、当然のことのように考えられたりしてしまいますが、教育機関からの要求は、指導の構成を決定する主要な要素です。そして教員の仕事や学生の生活にも影響を与えています。以下に中等後教育での対面指導の構成に影響を与える教育機関からの要求をいくつか挙げてみます。

  • 学位に必要な最低学修年限
  • 専攻プログラムの承認および再検討のプロセス
  • 学位に必要な単位数
  • 単位と教室内における接触時間との関係
  • セメスターの長さと単位時間との関係
  • 教員と学生の比率
  • 教室や実験室の利用状況
  • 試験の時間と場所

これ以外にもたくさんあるでしょう。学校制度においては学期の長さや祝日の時期など共通点もあります。(学生の学習時間に基づいたカーネギー・ユニットという単位が、なぜアメリカで採用されるようになったのかという少し変わった理由については Wikipedia を参照してください)。

キャンパスを有する教育機関の規模が大きくなるにつれて、構成に関して行う要求も「強固なもの」になってきています。そうでないと、機関内で一貫した教育サービスを提供することが難しくなってしまうからです。このような一貫性を保つのは、説明責任、単位認定、政府からの補助金、単位互換、大学院への進学、またその他の多くの理由からです。このような強力で体系的な要求を当該教育機関だけで変更するのは不可能ではないにしても、かなり難しいと言えるでしょう。

どの教員も多くの制約に縛られています。特にカリキュラムは、それぞれの科目ごとにセメスターの長さ、単位数、教室内での指導時間(以下、接触時間)などを「ユニット」という時間の枠組みに合わせないといけません。また、1クラスの人数や教室の利用状況も考慮しなければいけません。教員も学生も特定の時間に特定の場所(教室、試験室、実験室)にいなければいけません。

学問の自由という概念があるとは言え、対面指導の構成の大部分は教育機関が事前に決めてしまっています。デジタル時代における学習者のニーズを考えた場合の制約の是非や、学問の自由への制限を教職員組合が受け入れるのかと、つい話が脱線してしまいそうになりますが、ここでの狙いはどの制約がオンライン学習にも当てはまり、どれが当てはまらないかを確認することです。それによって指導の構成が変わってくるからです。

11.9.3 教育機関がオンライン指導の構成に関して行う要求

オンライン指導は、特に導入初期の頃においては、受け入れること自体が大変でした。オンラインで学んだり教えたりした経験のない人を中心に、オンライン指導の質や効果について懐疑的な見方をしている人が多かったからです。もちろん今でもそのような人はいます。そこで初期の頃には、オンライン指導における目標や構成を対面指導のものと同一のものに設計することに注力して、オンライン指導も対面指導と「同じぐらい良い」ということを証明しようとしていました。そして研究の結果、それは証明されました。

一方、オンライン指導と対面指導と同じにするということは、同じ前提でコースや単位、セメスターを考えなければいけないということです。1971年に遡ると、イギリスのオープン大学では、キャンパス型で行う学位プログラムの総学習時間とほぼ同じ学習時間を要求する学位プログラムを採用しました。しかしその構成は全く異なっており、例えば通常の単位数であれば32週間、半分の単位数であれば16週間というコースを用意していました。1つの理由は、そのようにすることで統合的で学際的な基盤コースを提供することが可能になるからでした。その他にも基準とは異なる指導の構成をしている大学はいくつかあります。例えば、ウェスタン・ガバナーズ大学ではコンピテンシーに基づく学習を重視していますし、ニューヨーク州にあるエンパイア州立大学では社会人学生を対象に学習の契約書を締結することを重視しています。

オンライン学習プログラムを対面学習プログラムと同一にすることを目指すのであれば、プログラムにおける必要学習期間(例えば北アメリカの学士号であれば4年間)、学位に必要な総単位数などを対面学習のものと同一にしなければいけません。これはつまり暗に学習時間も同じだということを意味しています。しかしこの枠組みが崩れるのは接触時間を計算する時です。接触時間は定義上、教室内における指導時間を意味します。つまり13週間で行われる3単位の授業はだいたい1セメスター13週で、週3時間教室で行う授業に相当します。

この接触時間という概念には多くの問題がありますが、対面授業では標準的な測定単位になっています。中等後教育、とりわけ大学での学習では、講義に出席する以上のことが求められています。よく言われているように、1時間の教室時間に加えて、学生は読書や課題などに最低2時間を費やさなければいけない計算です。学問分野によって接触時間は大きく異なってきますが、一般的には工学や科学分野のように、多くの時間を研究室や実験室で過ごす学生と比較すると、人文科学系の学生の接触時間はかなり少なくなります。また、接触時間の限界は、あくまでもインプットを測定する単位であり、アウトプットは入らないということです。

ブレンド型やハイブリッド型の学習に移行する際、従来のセメスターという枠組みで実施すれば、接触時間という概念が崩れてしまいます。学生は1週間に1時間だけを教室内で過ごし、残りは全てオンラインということもありますし、ある週に15時間を研究室で過ごし、残りの週は研究室に来ないということも考えられます。

ブレンド型、ハイブリッド型、完全オンラインのコースで学習している学生が学位を取得するには、対面で授業を受けている学生と同一の基準に達すること、あるいは学生が同一の「概念上の」時間を費やすことを保障する方が良いのかもしれません。つまり、オンライン、ブレンド型、対面を問わず、同一の量の活動を課すようにコースや専攻プログラムを設計するのです。ただし情報配信の方法の違いで、課題をどのように配布するかはかなり異なってきます。

11.9.4 オンライン・コースでの課題はどの程度与えるべきか

ブレンド型やオンラインのコースでどのように授業を組み立てるのが良いか決める前に、まず学生が当該コースにおいて、どの程度の学習をするべきなのかを考える必要があります。先ほども述べたように、学習時間はフルタイムの学生のものと同一でなければいけません。ただし、対面授業での接触時間はカウントできたとしても、対面授業の学生が授業時間外で費やしている時間はカウントされていません。

合理的な計算をすると、学部生の3単位の授業は週当たり約8~9時間の学習に相当し、13週間では合計約100時間になります。フルタイムの学生は3単位の授業を年間10科目履修しますが、これは1セメスター当たり5科目の3単位の授業を取る計算となり、2セメスターにわたって1週間につき40~45時間学習することになります。2セメスターにまたがる場合は少しだけ時間が減ります。

賛成してもらわなくても構いませんが、私の運用基準は以下の通りです。科目によっては多すぎるとか少なすぎるとか感じる場合もあるでしょうが、そんなことは大きな問題ではありません。あなた自身が時間を決めるのです。大事なポイントは、平均的な学生がコースや専攻プログラムで費やすであろう総学習時間数を具体的なターゲットとして定めることです。また、それよりも速く、あるいはそれよりも遅く、コースの修了基準に達する学生がいるということにも留意しておきましょう。このようにコースや専攻プログラム単位における学生の総学習時間数を計算することで限界量や制約が分かり、その時間内でどのように学習を組み立てなければいけないかが決まります。コースが始まる時点で学生にどのくらいの時間の学習を期待しているかを示しておくのも良い考えでしょう。

通常、1つのコースに詰め込むことができる内容は、学生が確保できる学習時間よりもはるかに多いです。そこで、個々の学生が調査、課題、プロジェクト活動を行う時間を確保できる程度の、学問上も妥当な最低限の分量のコンテンツをそれぞれのコースで提供することになります。一般的には教員はその科目における専門家であり、学生はそうではありません。このため教員は、学生がトピックを網羅するのに必要な時間を少なく見積もる傾向があります。ここでもインストラクショナル・デザイナーが活躍します。学生の負担について、専門家からもセカンド・オピニオンをもらうと良いでしょう。

11.9.5 構成をしっかりとするか、それとも緩やかなものにするか

その他にも、どこまでコースをしっかりと構成するかについても、重要な決断を下さなければいけません。これはあなたの指導理念や学生のニーズによります。

あなたが担当するコースにおいて網羅すべきコンテンツや、コンテンツを提示する順序、あるいは認証団体が要求する必修のカリキュラムなどに関して強い信念があるのなら、学生が行う作業や活動と結びつけ、コースのどのタイミングでどのようなトピックを扱うかを決めるなど、しっかりとした構成にしたいと思うかもしれません。

一方、学習を管理し組み立てるのは学生の役目の一部であると考えている、あるいは何をどのような順番で学びたいか学生に任せたいということであれば、コースにおける学習目標に合致する範囲内で、緩やかな構成にしたいと考えるかもしれません。

コースの構成は、教えている学生のタイプによっても変わるでしょう。学生には自律的学習を行うスキルがない場合、あるいはその分野の知識を持っていない場合には、少なくとも最初のうちは学生を導くため、しっかりとコースを構成しておく必要があるでしょう。一方、高度な自己管理能力を持っている学部4年生や大学院生の場合には、柔軟な組み立てをした方が学生のニーズに合うでしょう。さらにはクラスの受講者数による影響もあります。受講者数が多い場合には、しっかりとした構成で、なおかつ明確である必要があります。なぜなら緩やかなものにしてしまうと、学生とやり取りをしたり、サポートしたりする時間が必要となり、あなた自身の負担が大きくなってしまうからです。

私の好みでは、完全オンラインの指導においては、しっかりとした構成です。学生は何をいつまでに行うことが期待されているのか、明確な意識を持つことができるからです。これは大学院でも同様です。ただし大学院では、何を学ぶかの選択肢をより多く与えます。そして、より複雑な課題を遂行するために長めの期間を与えます。調査に関するスキルや分析的思考など、どのようなスキルを育成したいかということについては、望ましい学習成果として明確に定義しておきます。また課題の提出期限は明確に決めておきます。そうしないと私の負担が劇的に増加してしまうからです。

ブレンド型学習では、学生に対して少しずつ学習への責任を持たせていくことができます。しかしそれは教室という「安全な」枠組みの中で定期的に行います。教室では個人あるいは小さなグループで行なった活動について、学生は進捗状況を報告しなければなりません。そして特に学部生には、コースのレベルではなく、専攻プログラム全体のレベルでこのことを考えさせます。1つの考え方としては、1年目は対面での指導に重点を置き、2~3年目にブレンド型あるいはハイブリッド型のオンライン学習を徐々に導入していき、4年目で完全オンラインのコースをいくつか導入するという方法があります。このようにして学生は生涯学習のより良い準備をしていきます。

Print

Figure 11.9.5 The University of British Columbia's ETEC 522
図11.9.5ブリティッシュ・コロンビア大学のETEC 522

ETEC522 は緩やかな構成を用いている大学院のプログラムです。学生はコースのテーマに沿って各自が活動を組み立てていきます。毎週のトピックは右側に、学生が投稿した活動の成果が中心に表示されています。このプログラムでは LMS ではなく WordPress と呼ばれるコンテンツ管理システム (CMS) を利用しています。WordPress を使えば、学生は自分の活動の投稿および管理が簡単にできます。

Print

11.9.6 対面授業をオンラインに移行する

対面授業をそのままオンラインに移行することがコースの構成を決める最も簡単な方法でしょう。講義のトピックごとに毎週の課題の内容が明確に決まっているので、コースの構成はほとんど固まっています。大変なのはコンテンツを構成することではなく、後ほど詳しく述べるように、学生が行う適切なオンライン活動を提供できるかどうかです。多くの LMS ではコースはトピックに沿って週単位で構成されており、学生に明確なスケジュールを提示することができます。これは問題解決型学習 (PBL) などその他のアプローチでも同様ですが、問題解決学習の場合はほぼ1日を単位として活動を分割する方がふさわしい場合もあるでしょう。

大事なのは、対面授業のコンテンツをオンライン学習にふさわしい形で確実に移行することです。例えばパワーポイントのスライドだけでは、講義で口頭説明した内容を網羅することができません。そのため、オンラインで完結するように、コンテンツを構成し直したり、設計し直したりしなければいけません。(インストラクショナル・デザイナーが手助けをしてくれるでしょう。)その際、学生が決まった分量の時間で行う活動の総量に注意しましょう。全ての課題図書や活動などをこなした場合、あなたが設定する平均的な1週間の活動量を大幅に超えてしまっては実現できません。超えてしまいそうな場合には、コンテンツや練習問題のいくつかを削除したり、練習問題を「任意」のものにしたりすることを検討しても良いでしょう。しかし「任意」にした場合は評価するべきではありません。評価に含まれないとなると、学生はすぐに練習問題をやらなくなってしまいます。このように対面授業においても、改めて時間を基準に考えてみると、学生に過剰な練習問題を与えてしまっていたことに気づくこともあります。

オンラインで学習している学生が、定期的に教室に来て学んでいる学生よりも、無計画に学んでいるだろうということは常に覚えておきましょう。特定の時間に特定の場所で学ぶという決まりがないため、オンラインで学ぶ学生は毎週行うべきこと、そして学習が進むにつれて何をすべきかについて、はっきりと知らせておかなければいけません。大切なのは学生がオンラインでぐずぐず先延ばしにして、コースが終わる頃になって慌ててやるような事態を避けることです。対面授業でも同じですが、これが失敗の原因になることが多いからです。

オンライン学習をうまく進めるためには、学生が行う活動を明確に定義しておくことが必要不可欠です。ここからは学生の活動を見ていきますが、学生の負担を適切なものにしようとすると、コンテンツと練習問題の関係がトレード・オフになってしまうことがよくあります。

11.9.7 ブレンド型のコースを組み立てる

ブレンド型学習を採用したコースでは、意図的ではなく偶然そのような形式になったという場合が多く見られます。LMSを利用した学習教材や講義ノート、課題図書といったオンラインの要素が、徐々に通常の教室内の指導に追加されていくのです。このような場合、対面授業の要素にも修正を加えないと危険なことになってしまいます。数年が経過すると、さらに多くの教材や練習問題、課題などがオンラインに追加されていくでしょう。多くの場合、これらの活動は任意のものですが、宿題として強制される場合もあります。そして学生の負担が劇的に増加してしまうことになります。また、多くの教材を管理しなければいけないため、教員の負担も増加してしまいます。

ブレンド型学習を見直す時には、コースの構成と学生の負担について慎重に検討しましょう。Means et al. (2011) は、ブレンド型学習の方が良い結果を得られる理由の1つは、学生がタスクに時間をかけること、つまりよく勉強するからだと仮定しています。これは良いことではありますが、全てのコースで次々に活動を追加してしまうと、そうは言えなくなります。ブレンド型に移行する時には、オンラインでの課題を追加する代わりに対面授業での時間(移動時間も含めて)を減らすことが必要不可欠です。

11.9.8 オンラインでの新しいコースや専攻プログラムを設計する

今までキャンパスでは提供されていなかったコースや専攻プログラム(例えば専門職大学院や応用分野における修士課程など)を始める際には、オンラインの環境に最適なユニークな構成や、コースを履修するであろう学生(例えば社会人)を視野に入れてコースを設計しなければいけないでしょう。

大切なのは、対面授業と同じような時間の分割は必要ないということです。なぜなら学生が授業を受けるためには、特定の時間に特定の場所にいなければいけないといった制約がないからです。オンラインのコースは通常、コースが公式にスタートする前にはもう「準備」されており、学生からのアクセスを待っている状態です。理論上、学生はコースを素早く、あるいはゆっくり時間をかけて終わらせることもできます。そこで教員はコースの構成、特に学生の活動の流れをどのようにコントロールするかについて、様々な方法を考えておかなければいけません。

このことは、生涯学習の学習者やパート・タイムの学生が主な受講生の場合に、特に大事になってきます。それぞれの学生がそれぞれのスピードで課題を行えるようにコースを構成することもできるかもしれません。例えばコンピテンシーに基づいた学習では、同一のコースや専攻プログラムであっても、学生はそれぞれのスピードで学習を進めることができます。オープン大学のいくつかでは常時登録ができるようになっており、学生は好きな時にコースを開始し、好きな時に修了することができます。オンライン学習を選んだ学生の多くは働いているので、フル・タイムの学生よりも長い時間をかけて修了することを認める必要があるのかもしれません。例えばキャンパスで行う修士課程が1~2年で修了しなければいけないのであれば、オンラインの専門職大学院の場合、最長5年まで可能にするなどの対応が必要かもしれません。

11.9.9 コースを構成する際の重要な原則

これまで述べてきたことのいくつかを行わないという理由を見つけることは簡単かもしれませんが、これは教育機関側の制約ではなく、むしろ指導法に関わる理由づけです。例えば、私はいつでも履修できる常時登録制や、各自が自分のペースで行う学習をあまり良いとは思っていません。その理由は、私は特に大学院レベルにおいては、オンラインでのディスカッション・フォーラムやグループ活動を多く取り入れているからです。私は学生がだいたい同じようなペースで活動をすることを望んでおり、ペースを保つことで焦点を絞ったディスカッションを行うことができます。コースの中で学生がそれぞれ異なったことをやっている場合には、グループ活動を行うのは不可能とは言わないまでも難しいでしょう。一方で、数学などのコースでは、各自のペースに基づいた指導を行なっても良いでしょう。その他の従来とは異なるコースの構成については、以下の学生の活動のセクションで見ることにします。

しかし、どのようにコースを組み立てるにせよ、2つの原則があります。

  • 学生は毎週、どれだけの時間をコースに費やすかに関して、何らかの考えを用意していること。
  • 学生は毎週、何をいつまでにやらなければいけないかについて明確に知らされていること。

11.9.10 学生の活動をデザインする

コース設計のプロセスの中で、学生の活動を設計することは最も重要です。特に完全オンラインの形式で学んでいる学生にとっては、教員や他の学生に会うための教室やキャンパスといった環境がなく、対面授業のように自発的に質問したり議論したりする機会がないからです。そしてこのことは対面授業の学生にも当てはまります。対面授業であっても自発的な質問や、議論をさせているでしょうか。配信方法の如何を問わず、学生の活動を定期的に行うことが、全ての学生をコースに参加させ活動をさせるために重要なのです。

学生の活動には以下のようなものが含まれるかもしれません。

  • 課題図書
  • LMS の CBT (Computer-Based Testing) 機能を用いた、自動フィードバック付きの理解度に関する、単純な多肢選択型での自己評価テスト
  • 他の学生との比較や議論のために共有することもできる、短文での回答を求める質問
  • 公式に採点され評価対象となる、月1回のショート・エッセイ
  • 数週間にわたって行われる個人やグループでのプロジェクト活動
  • 個々の学生が最近行なった学習を振り返り、場合によっては教員や他の学生と共有できるブログや eポートフォリオ
  • 教員が設定し、観察する必要があるオンライン・ディスカッション・フォーラム

その他にも教員の工夫次第で学生を引き込むことができる数多くの活動があります。しかし、このような活動はコースで提示されている学習目標と明確に結びついている必要があります。そして学生が最終的な評価に向けて準備をする際にも、これらの活動が役に立ったということを理解していることも必要です。学習成果がスキルの育成に焦点を当てたものであれば、学生はそのスキルを伸ばし練習する機会を与えるような活動を盛り込むべきでしょう。

また、このような活動を定期的に行い、学生が活動を終えるのに必要な時間を計算しておく必要があります。ステップ8では、このような学生の活動を教員が観察する必要性について述べます。

この時点で「コンテンツ」と「活動」のバランスをどのように取るかについて、難しい決断を迫られます。学生は毎週少なくとも1度は、課題図書を読む以外の正規の活動を行うために十分な時間を確保しなければいけません。そうしないと、学生の履修放棄や、単位を落とすリスクが劇的に増加します。特に、活動に関するフィードバックやコメントを教員や他の学生からもらえる何らかの手段が必要でしょう。また、コースを設計する際には学生の負担だけではなく、教員の負担も考慮しなければいけません。

私の考えでは、多くの大学のコースはコンテンツを詰め込み過ぎており、学生がコンテンツを吸収、応用、評価するために何が必要かはあまり考えていません。私の経験に基づいて大まかに言えば、学生がコンテンツの読解や講義への出席に費やす時間は半分以下にとどめ、残りは上で述べたような活動を通して、学生が解釈、分析、応用するための時間にするべきです。学生が成長し自己管理ができるようになれば、活動の割合を増やしても良いでしょう。こうした活動の中で、学生は自分自身で教員が設定した目標や基準に合致する適切なコンテンツを発見できるようになります。しかし、これはあくまでも私の考えです。あなたの教育理念がどんなものであれ、オンラインで学習する学生には何らかの形でフィードバックを与えるような活動をたくさん行うべきです。そうしないと多くの学生は履修を次々と放棄してしまうでしょう。

11.9.11 多様な構成と一つの高い基準

オンライン・コースに適切な構成を担保するための方法は他にもたくさんあります。例えばカーネギー・メロン大学の Open Learning Initiative では、短大の1年生、2年生が履修する標準的なコースを1つの完全なパッケージとして提供しています。それらのコースでは教科書に加えて、コンテンツや到達目標、そして活動が事前に設定された LMS が用意されています。コンテンツの構成もきちんとしており、学生の活動も組み込まれています。教員の役割は主にコースをどのように教えるか、どのようにフィードバックを与えるかの検討と、必要に応じた採点です。このようなコースは非常に効果的であることが証明されており、多くの学生がプログラムを修了しています。

シナリオD で歴史を担当する教員は最初の3週間、週3コマの授業を通常通り行い、その後5週間は、小さなグループごとに1つの主要なプロジェクトに関わる活動を全てオンラインで行わせました。そして残りの5週間では、3時間の集合教育を週1回行い、学生の報告、クラス全体での議論を行いました。

先ほども述べましたが、コンピテンシーに基づいた学習では、トピックの順番や学習者の活動がアカデミックな観点から高度に構造化されており、学生がコンピテンシーを獲得するのに必要な時間に柔軟に対応できます。

マクマスター大学の Integrated Science Program では、学部生のリサーチ・プロジェクトを6~10週間で構成しています。

Stephen Downes、George Siemen、Dave Cormier らによる #Change11 のような cMOOC は緩やかな構成を採用しており、毎週異なった人によって異なったトピックが提供されます。ブログへの投稿やコメントなどの学生が行う活動にコース・デザイナーは関与しておらず、学生に委ねられています。このコースは単位が認定されないコースであり、MOOC 全体を修了できる人はほとんどいないのですが、このような状況はコース提供者の意図しているところではありません。一方、スタンフォードと MIT による xMOOC は学生の活動を含めて高度に構造化されており、フィードバックも完全に自動化されています。コースを修了できるのは10%以下ですが、このコースも同様に単位が認定されないコースです。最近では MOOCs はどんどん短縮化されており、中には3~4週間しかかからないようなコースもあります。

オンライン学習という形態は、週3コマ×13週という厳格な3セメスター制の束縛から逃れ、学習者のニーズに合わせて最適化し、教員の好む指導法を用いたコースを作ることを可能にしてくれます。単位化されているオンライン・コースや専攻プログラムにおける私の目標は、高いアカデミックの質と高い修了率を保証することです。そのためには適切な構成や、関連した学習活動を作り上げることが大事なステップだと考えています。

アクティビティー 11.9 コースや専攻プログラムを構成する

  1. 3単位のコースでは学生は週に何時間勉強するべきでしょうか。その答えが私の考える8~9時間と違う場合、なぜですか。
  2. 単位が与えられるオンラインの専攻プログラムをゼロからデザインするのであれば「伝統的な」13週間3単位のコースの構成に従うべきでしょうか。もし従わなくても良いとしたら、どのように専攻プログラムを構成しますか。そしてまたその理由は何ですか。
  3. 単位が与えられるコースでは内容が「詰め込みすぎ」で、十分な学習活動が提供されていないと思いますか。高等教育ではコンテンツだけに焦点を当てており、スキルの発達には十分な焦点を当てていないのでしょうか。もしそうであるならば、コースの構成にどのような影響を与えているでしょうか。また、学習の質にはどのぐらい影響を与えているでしょうか。

License

Icon for the Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License

デジタル時代の教育 by Anthony William (Tony) Bates is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial 4.0 International License, except where otherwise noted.

Share This Book