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多くの教員にとって、コンテンツは依然として重要です。コンテンツには、事実、考え方、原則、証拠、プロセスまたは手順の説明が含まれます。カリキュラムにはどのようなコンテンツを含めるべきか、どのようなコンテンツをコースや専攻プログラムで網羅する必要があるのか、学生は教科書など、どの情報源にアクセスすべきなのかといった検討に対して、多くの時間が費やされます。教員は、利用できる時間内にカリキュラム全体を網羅するよう圧力をかけられることがよくあります。特に対面式の講義では、コンテンツを整理して提供するための主要な手段として残っています。
本書では、スキル獲得とコンテンツのバランスをとる事例が何度も紹介されていますが、コンテンツに関する問題は教育では非常に重要です。特に、教員は次の点について検討する必要があります。
- どのようなコンテンツがこのコースまたは専攻プログラムの全体の目標に対して付加価値を与えるのか。
- どのようなコンテンツが学生にとって良いか。
- どのようなコンテンツなら必要に応じて、省くことができるか。
A.4.1 コンテンツの目標
中等後教育の教員は当然のことながらコンテンツを重視する傾向があります。私たちが教えるものだからです。しかしデジタル時代の教育を設計する際には、コンテンツを教えるためには目標を明確にすることが重要です。なぜ私たちは学生たちに事実、考え方、原則、証拠、プロセスや手順の説明を知ることを要求するのでしょうか。特定のコンテンツを学習すること自体が目標なのでしょうか。それとも目標を達成するための手段なのでしょうか。例えば、周期表や戦争の日時を知ることに本質的な価値があるのでしょうか。それとも、実験を計画することや、カナダの公用語がフランス語である理由を理解するという目標のためでしょうか。
この問題は重要です。なぜならデジタル時代では、事実や定義や方程式を調べるのは容易なので、コンテンツの学習や記憶はそれほど重要ではなくなり、中には不適切であると主張する人さえいます。認知主義者は、コンテンツに意味を持たせるためには、コンテンツを枠組みへ埋め込むか、文脈に入れる必要があると主張しています。問題を解決したり決定を下したりすることができるようにするために、コンテンツを学習する必要があるのでしょうか。それともアクセスが簡単になったため、必要に応じてコンテンツを利用するだけで済むのでしょうか。
なぜコンテンツを教えなければならないのかを教員が明確にする以上に、おそらく学生自身がこのことを理解することがより重要です。そのための1つの方法は問うことです。
- この特定のコンテンツを教えることによって、このコースまたは専攻プログラムの全体の目標にどのような価値が追加されるのでしょうか。
- 学生はこのコンテンツを暗記する必要がありますか、またはどこでそれを見つけるべきか、そしていつそれを利用することが重要であるかを知る必要がありますか。
これは当然のことながらコースまたは専攻プログラム全体として、非常に明確な目標を持っていることを表します。
A.4.2 量と深さ
多くの文脈において、教員はコンテンツに対してほとんど選択肢がありません。認定機関、州政府、専門的に認証評価をする委員会などの外部機関が、特定のコースや専攻プログラムで、どのようなコンテンツを網羅する必要があるかを決めている可能性があります。しかし科学的・技術的知識の急速な発展は、学生が学ばなければならないコンテンツがある程度決まっているという考え方にますます挑んでいます。工学プログラムや医療プログラムでは6〜8年間の正規教育でも、専門家が効果的に実践するために知っておく必要がある、全ての知識を網羅するのに苦労しています。その分野の新たな発展に遅れずについていくのであれば、専門家は卒業後も学び続ける必要があるでしょう。
たとえ起きている時間の全てで一生懸命勉強しても、当該分野の学生が仕事で必要とする全ての情報を習得することができません。ですから、特にコンテンツを素早く網羅したり、学生に大量のコンテンツを課したりすることは、効果的な教育戦略ではありません。何かを専門的に深く学ぶことは知識の増大に対処するための伝統的な方法ですが、それは複雑な問題や実世界の問題に対処するのには役立ちません。なぜなら現実はしばしば複数の領域にまたがっており、広範な知識を必要とするからです。したがって教員は、学生が自分の分野での膨大な量の知識に対処することを可能にする方略を開発する必要があります。
知識爆発の問題に対処する1つの方法は、知識管理、問題解決、意思決定などのスキルの獲得に集中することです。ただし、これらのスキルではコンテンツが不要というわけではありません。問題を解決したり決定を下したりするには、事実、原則、考え方、概念、データにアクセスする必要があります。知識を管理するには、どのようなコンテンツが重要であるのか、なぜ重要なのか、どこで見つかるのか、どのように評価するかを知る必要があります。特に、多くの人にとっては大部分が専門的な取り組みではないにしても、習得する必要がある中心的・基本的な知識やコンテンツがあるかもしれません。その場合の教育スキルの1つは、コンテンツの本質的な分野と学習が望ましい分野を区別できるようにし、スキルを伸ばすために行っていることの全てで、中心的なコンテンツを確実に網羅することです。
A.4.3 情報源
デジタル時代の教員にとってのもう1つの重要な決定は、学生がどこを情報源として見なしてコンテンツを取得するかです。中世の頃は本は貴重で、図書館は学生だけでなく教授にとっても欠くことのできない情報源でした。コンテンツの情報源が非常に少ないため、教授はコンテンツを選択し、不適切な候補をふるい落とし、学生に紹介しなければなりませんでした。今日はそのような状況ではありません。コンテンツは文字通りいたるところにあります。インターネット、ソーシャル・メディア、マスメディア、図書館、本、そして講義室の中にあります。
学科や専攻プログラムの会議では、学生がどの教科書や記事を読む必要があるかを話し合うために多くの時間が費やされることがよくあります。コンテンツの選択や制限を行う理由の一部は、コースや専攻プログラム内で限られた範囲の資料に重点を置くため、そして学生の負担軽減のためです。しかし今日では、インターネット上でコンテンツがますますオープンになり、無料で自由に利用できるようになりました。ほとんどの学生は卒業後も学び続ける必要があります。彼らはますます知識の情報源のためにデジタル・メディアに頼るようになるでしょう。したがって、コンテンツを決定する際には、次の点を考慮する必要があります。
- 幅広いカリキュラムのトピック以外で、教員が専攻プログラムのコンテンツを選ぶ必要がある範囲はどこまでですか。
- 学生はコンテンツとそのコンテンツの情報源はどの程度まで自由に選択できますか。
- コンテンツが他の場所でも自由に利用できる場合、講義やパワーポイントのスライドを通じて、教員はコンテンツをどの程度まで提供する必要がありますか。
- コンテンツを教員自身が提供することによる付加価値とは何ですか。
- あなたの時間を他のことでもっとうまく利用できないですか。
- オープンにアクセス可能なコンテンツを選択して利用するための運用基準を学生にどの程度まで提供する必要がありますか。そのための最良の方法は何ですか。
これらの質問に答える際、私たちの決定が、学生の卒業後に学生自身がコンテンツを適切に管理する支援につながるかどうかも確認すべきです。
A.4.4 構造
教員が提供する最も重要なサポートの1つは、様々なコンテンツ要素の順序と相互関係を構造化することです。私の場合、構造化の中に以下を組み込みます。
- コンテンツの選択と順序
- 特定のコンテンツへの焦点やアプローチの検討
- 学生がコンテンツを分析、解釈、適用することへの支援
- 異なるコンテンツ領域を統合との関連付け
従来、コンテンツは特定の順序で数多くのトピックに関連した種類ごとに分割することで構造化されていました。そしてそれぞれの教員はコンテンツの基本構造を解釈しながら授業を組み立てていました。しかし新しいテクノロジーは、コンテンツを構造化するための代替手段を提供しています。Blackboard や Moodle などの LMS を利用すると、教員はコンテンツ素材を選択して順序付けることができ、学生はコンテンツ素材にいつでもどこでもどのような順序でもアクセスできます。インターネット上での幅広いコンテンツの利用可能性や、ブログ、Wiki、eポートフォリオを通じてコンテンツを収集したり並べ替えたりする機能により、学生はますます自分の中でコンテンツを構造化しながら学習できるようになっています。
一部のものは「正しい順序」で学習する必要があるため、コンテンツの分野によっては何らかの構造が必要となります。なぜなら構造がない場合、コンテンツが無関係なトピックの寄せ集めになることがあり、学生は少なくとも学習を始めるまで、そのコンテンツ分野にとって重要なことは何であり、後回しにしても良いことは何であるかを知ることができないからです。特に初学者にとって重要なのは、毎週、自分が何を学習しなければならないのかということです。初学者の場合、コンテンツがきっちりと構造化され、コンテンツのどの部分を連続的に学ぶのかが分かる方がメリットが大きいという研究結果が数多くあります。しかし、その領域についての知識が多くなり、経験も増えてくると、学生らがコンテンツを選択し、順序付けし、解釈するというアプローチを探し求めるようになります。
したがって、コースまたは専攻プログラムのコンテンツ構造を決定する際には、教員は以下のことを検討する必要があります。
- コンテンツを管理するために、学生にはどの程度、構造化を提供すべきでしょうか。
- 学生にはどの程度、構造化を任せるべきでしょうか。
- 新しいテクノロジーは、コンテンツの構造化にどのような影響を与えるでしょうか。
- 新しいテクノロジーで、多様な学生のニーズに合わせるために柔軟な構造を提供することは可能でしょうか。
また、これらの質問に答える際には、学生自身がコンテンツを構造化することができるようになるのがどのぐらい重要なことなのか、そして教員は将来的に学生自身がコンテンツを構造化する手助けをするべきかについて、検討しておく必要があります。
A.4.5 学習者のアクティビティー
学生がコンテンツを学ぶのを支援するために、学生にどのようなアクティビティーをさせる必要があるでしょうか。この質問に答えることで、コンテンツを学ぶための目標とコースの全体的な目標に戻ることができます。
- コースの目的が暗記重視の場合、正解を登録したコンピュータが採点する課題などの自動化されたテストを利用できます。
- コースの目的が、事実、原則、データ、証拠などのコンテンツを利用して議論したり、方程式を解いたり、実験を計画したりできるようにすることである場合、そのようなスキルを実践する機会が必要です。
- コースの目的が、学生の知識管理を助けることである場合、コンテンツを選択し、評価し、分析し、適用することを要求するタスクを教員が設定することが必要かもしれません。
テクノロジーは学生がコンテンツを習得するのに利用できるアクティビティーの範囲をかなり広げてくれることが分かります。しかしこれらは専攻プログラムのコースに設定された学習目標と関連していなければいけません。そしてアクティビティーが設計されていなければ、コンテンツが一度脳に入ってきても、次の日に出ていってしまうかもしれません。
A.4.6 結論
デジタル時代においても、知っておくべきであるという点でコンテンツは非常に重要ですが、デジタル時代におけるコンテンツの役割は微妙に変化しており、それ自体が目的ではなく、ある意味ではスキル開発など他の目的に至る手段となっています。ほとんど全ての分野において知識は急速に進化しているため、コース内でのコンテンツの役割と目的を明確にし、効果的に学生とやり取りすることがとりわけ重要になっています。