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A.2.1 定義
「学習環境とは、学生が学ぶ様々な物理的な場所、状況、および文化のことです。学生は学外や屋外の環境など、様々な場面で学ぶことがある。机や黒板のある「教室」は限定的で伝統的な意味合いを持つので、その代わりとして、学習環境という用語が、より正確で好ましいものとして利用されます。
この用語はまた、学校や教室といった文化の縮図となっています.つまり,この用語には,各個人が他者とどのようにかかわるのか,学習を促進するために教員がどのように教育の状況を組織化するのかといったことを含む倫理や特性も前提としています…」
教育改革の用語集, 2014年8月29日
この定義では、学習者は多様な文脈の多様な方法で学ぶことを認識しています。学習者は学習をしなければならないことを踏まえると、目的は学習者の学ぶ力を最大化するための学習の総合的な環境を作り出すこととなります。もちろん、最適な学習環境は1つだけではありません。無限の学習環境の可能性があり、それが教育をとても面白くしてくれます。
A.2.2 効果的な学習環境の構成要素
特定のコースや専攻プログラムで、学生のための総合的な学習環境を開発することは、おそらく教育の最もクリエイティブな部分です。教室、講義室、研究室など、物理的な施設という意味での学習環境、またはオンラインでの個人学習環境を作成するために利用されるテクノロジーのいずれかに焦点を当てる傾向がありますが、学習環境はこれらの物理的要素だけではありません。以下のものも含まれます。
- 学習者の特徴
- 教育と学習の目標
- 学習に最も役立つアクティビティー
- 学習を最も正確に測定し、促すための評価方略
- 学習環境を活発にする文化
図A.2.2 は、教員の観点から考えられる学習環境の1つを示しています。教員は、学習者の特性やリソースなどの一部の要素についてはほとんど、あるいは全く制御できませんが、コンテンツの選択や学習者のサポート方法など、その他の要素は完全に制御できます。それぞれの主要な構成要素には、考慮すべき一連の下位要素(コンテンツの構造、練習問題として行うアクティビティー、フィードバック、テクノロジーの利用、評価方法など)があります。実際に決定を下す必要があるのは下位要素の方です。
私が図A.2.2で示したのは、ほんの少しの構成要素であり、包括的というわけではありません。例えば倫理的行動の発達、教育機関としての要素、外部認証評価などの構成要素も含めることができます。いずれも教員が教える学習環境に影響を与えるものなのかもしれません。特定のコースや専攻プログラムの教育上の文脈を包括的に眺めることを目的とした学習環境のモデルを考え出すことは試行錯誤に基づくものであり、特定の教員による特定の教育観に依存します。やはり構成要素の選択と、その重要性を理解することは、個人的な知識、学習観、教育観についての認識論や信念に、ある程度までは左右されるものなのでしょう。
最後に、私は教員として適切な学習環境を創り出す責任を負っているので、教員の視点からじっくりと考えた学習環境を提案しましたが、学習者の視点から学習環境を検討することも重要です。実際、成人や成熟した学習者は、自分自身の個人的な、比較的自律的な学習環境を作り出すことができます。
重要な点は、コースや専攻プログラムを教える際に考慮する必要がある構成要素を特定すること、特にコンテンツやカリキュラム以外の構成要素があるということです。例として選択した学習環境の重要なそれぞれの構成要素について、デジタル時代に特に関連する学習環境の構成要素に焦点を当てながら、以下のセクションで簡単に説明します。
アクティビティーA.2 学習環境への影響
- 私が学習者の視点ではなく教員の視点から学習環境に焦点を当てたのはなぜだと思いますか。
- シナリオDで HIST 305 の学習環境を作成するために、ラルフ・グッドイヤー教授は、構築したい学習環境と、ほとんど、または全く制御できない構成要素について慎重に検討しました。彼はどのような構成要素をほとんど、または全く制御できなかったと思いますか。
- 図A.2.2 の学習環境に何を追加(または削除)したいですか。
- 図A.2.2 は教員の視点から学習環境に焦点を当てています。学習者の視点でも同様の学習環境モデルを設計できますか。主な違いは何ですか。
- 学習環境全体について考えることは、教育に対する努力を闇雲に複雑にするでしょうか。どうしてそれでうまくいかないのでしょうか。