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マイク:おお、ジョージじゃないか。お前が UBC (ブリティッシュ・コロンビア大学) で取ってる奇妙なコースのことをアリソンとラヴィッシュに聴かせてやってくれよ。
ジョージ:やあ、お二人さん。いやあ、すごいコースなんだよ。僕が受講している他のコースとは全く違っててねえ。
ラヴィッシュ:どんなコースなんだい?
ジョージ:テクノロジー企業を新しく始める方法だよ。
アリソン:一体どうしたの?あなた、教育専攻の修士課程にいるわよね?
ジョージ:うん、そうだよ。このコースでは教育で使われる新しいテクノロジーに注目しているんだけどね。それでテクノロジーを一つ選んで、会社の作り方を学ぶんだ。
マイク:ジョージ、本当かよ?じゃあ、社会主義の原理とか、公教育の重要性とかはどうなるんだい?そういうのはもう一切合切諦めて、太った資本家にでもなろうってのかい?
ジョージ:ううん、そんなのじゃないよ。このコースでやろうとしているのは、学校や大学で上手にテクノロジーを使うにはどうしたらいいかを考えることなんだよ。
マイク:でも、儲ける方法とかもやるんだろ?
ラヴィッシュ:マイク、ちょっと黙っててくれないか。おいジョージ、聴かせてくれよ。俺、興味あるんだ。実際に経営学を勉強しているからな。お前、まさか13週間で会社を作る方法を勉強しているのかい?やれやれ、ちょっと待ってくれよ。
ジョージ:どちらかと言えば起業家になる方法かな。リスクがある中でこれまでと違ったことをやったりする。
マイク:もちろん他人の金でだよな?
ジョージ:うーん、本当に君はこのコースに関心があるのかい?それとも僕に苦難を味わわせたいだけなのかい?
アリソン:マイク、ちょっと黙っててよ。ところでジョージ、もう何かテクノロジーは選んだのかしら?
ジョージ:だいたいね。このコースではほとんどの時間をかけて教育分野で利用できそうな新しいテクノロジーのことを調べて分析しているんだけど、一つテクノロジーを選んで、調査して、それをどうやって教育に活かすか計画を立てて、しかもそれを使ってどうやってビジネスにつなげるかを考えるんだ。でも僕が思うに、このコースの本当の目的はどうやってテクノロジーで教育や学習を改善したり、変えたりできるかを考えることじゃないかなあ。
ラヴィッシュ:それで、一体どんなテクノロジーを選んだのかい?
ジョージ:ラヴィッシュ、そんなに結論を急ぐのは良くないよ。このコースでは2つの軍隊風の基礎訓練があってね、一つはエドテック市場の分析、もう一つは起業するための能力、つまり起業家になるためにはどうしたら良いかを知ることなんだよ。マイク、どうして笑ってるんだい?
マイク:お前が戦闘服を着て、砲火の下を這い回りながら、それでいて手には本を持っているなんて笑えるな。
ジョージ:まさか、そんな軍隊風の基礎訓練じゃないよ。完全にオンラインなんだ。先生が最初にいくつかテクノロジーを示してくれるんだ。でも多すぎて、あっという間に制限時間が過ぎてしまうぐらい次々と出てきてね、何を調査するかほとんど時間がないんだよ。そこでみんなで協力し合うんだ。多分これまで50種類以上の製品やサービスを調べたはずだよ。そしてみんなで分析結果を共有するんだ。今のところ3つまで絞り込めたんだけど、近いうちに1つに決めなきゃいけない。そして YouTube でうまく宣伝しないといけない。それが成績に繋がるんだ。
ラヴィッシュ:何だって?
ジョージ:みんなでほとんどの製品を調べ終わったら、次にそれを売り込むための短い動画をYouTubeで作ることになるんだよ。どんなテクノロジーを選んだとしても、その事例を8分以内の動画にしないといけない。それで成績の25%が決まるんだ。
アリソン:わあ、それは大変ね。
ジョージ:うん。みんなで助け合ってやってるよ。試し撮りしたのをみんなで見せ合ってあれこれ意見を出し合うんだ。それで何日かしてから完成版を提出するんだよ。
アリソン:他にはどんなことで成績が決まるの?
ジョージ:25%は失読症の学習者を助けるダイバスターっていう名前の製品を分析する課題で決まるんだ。僕は主に教育的な意味での長所と短所を分析したんだけど、これは商業的にも行けると思うね。別の課題で、これも25%分なんだけど、何か一つ製品やサービスを選んで、その応用事例を考えないといけなかった。僕の場合はある製品を使って一つの単元を教えたんだ。4人のチームなんだけどね、僕らのチームは無料で使える既製のオンライン・シミュレーション・ツールを使って、とある化学反応を教える簡単なモジュールを作ってみたんだよ。それから最後の25%分は議論や課題にどのくらい貢献したかで決まるのさ。
ラヴィッシュ:何だって?自分で自分の成績を決められるのか?
ジョージ:そうじゃない。自分でやったことを全部集めてポートフォリオみたいなものを作って、それを先生に提出するんだ。それを見て貢献の度合いによって成績をつけてくれることになっている。
アリソン:でも、まだよく分からないんだけど、カリキュラムってどうなってるの?どんな教科書を読まされるの?何を知ってなきゃいけないの?
ジョージ:うん。それが2つの軍隊風の基礎訓練なんだ。でも本当はね、僕ら学生がカリキュラムを作るんだよ。先生が言うには最初の週の課題は教育に関連がありそうな新しいテクノロジーにどういうものがあるのかを考えることだってね。そして8種類の中から選んでグループを作ったんだ。これまでたくさんいろいろなことを学んだよ。インターネットでいろいろな製品を検索して分析しただけだけどね。みんな、なぜその結論に至ったかを考えて正しく説明しなきゃいけないからね。どんな教育理念を持っているんだろう、とか、どんな基準で製品を選んだり拒んだりしているんだろう、とか、これってふさわしいツールなのかな、とか。でも会社が潰れてしまったり、テクノロジーがもうサポートされなくなったりで、いい教材がなくなってしまうのは残念だよね。何よりも勉強になるのはテクノロジーの別の使い方を考えることだよ。これまで別の教え方なんて考えたことがなかったのにね。テクノロジーは人生を楽にするだけのものだと思ってたけど、このコースのおかげで本当の可能性を考えることができるようになったよ。今になって思うんだけど、学校をデジタル時代に向かって振り回すためにも、もっといい立ち位置に立てたような気がするんだ。
アリソン:(ため息)うーん、それって学部と大学院の違いってことにならない?そんなこと、もっと教育のことを知ってからじゃないと、やっちゃダメだと思うわ。
ジョージ:どうだか分からないね。たくさんの起業家が教育のためのツール開発から手を引いたようには思えないし。
マイク:ジョージ、ごめんな。俺、お前が大金持ちになるのが待ちきれんわ。じゃあ次はお前が何か飲み物を買ってきてくれるよな?
このシナリオは教育工学専攻の修士課程プログラム(ブリティッシュ・コロンビア大学大学院)に基づいて書かれています。
教員は David Vogt と David Porter で、インストラクショナル・デザイナーの Jeff Miller が支援しています。